十勝川温泉　三余庵 さんよあん TokachigawaOnsen SANYOAN

ここで、十勝川温泉が誇る「モール温泉」について解説しておこう。
昭和初期には、世界で二ヶ所しかない（もう一ヶ所はドイツのバーデンバーデン）と言われていた「植物性モール温泉」。
現在では、「モール温泉」と呼ばれる泉質の湯が、国内各地でいくつか湧出しているが、ここ十勝川温泉の湯は、質量ともに他を遥かに圧倒している。

十勝川温泉のモール温泉は、弱アルカリ性という事もあり、古い角質や皮脂を落としつつ、保湿コーティング作用もある事から、美肌効果の高い「美人湯」とも呼ばれている。
わずかにトロっとした感触も味わえ、まるで天然素材の化粧水のよう。
主成分は、地中に埋もれていた植物が黒炭に変化する過程で生じるフミン質。
その成分が入った太古の植物が堆積した「亜炭層」と呼ばれる地層が、音更町の十勝川の河畔にある。
そして「亜炭層」の上にある地下水と混じり合い、温泉として湧出しているのだ。
通常、温泉は、鉱物成分により泉質が構成されるが、この温泉はまさに植物成分によって作られている。

植物が長い時間をかけて堆積した亜炭層から湧出する「植物性モール温泉」

お湯の色は神秘的で、琥珀色、飴色、茶褐色、紅茶色、珈琲色などと形容できる。
ちなみに、この「モール温泉」は、次世代へ引き継ぎたい北海道の財産として、2004年（平成16年）には、「北海道遺産」に選定された。

	また、ここで言う「モール温泉」は、一般的に言う泉質名ではない。 環境省の「鉱泉分析法指針」に拠れば、泉質は「ナトリウム－塩化物・炭酸水素塩泉」となる。
「北海道遺産」に選定されている「モール温泉」

「ナトリウム－炭酸水素塩泉（重曹泉）」と、「ナトリウム－塩化物泉（食塩泉）」、2つの性質を持っている。
「重曹泉」は、皮膚の表面を軟化し、石けんと同じような効果がある。
肌を滑らかに洗浄するため、美肌効果は高い。
また、皮膚病、火傷、切り傷にいいとされる。
湯浴み後はサッパリとした清涼感が味わえる。
対して「食塩泉」は、海水に成分の似た温泉。
塩分が汗の蒸発を防ぐので、カラダがよく温まる。
肌の保湿効果があるため、「重曹泉」のように肌の角質をとる湯に対して、乾燥を防ぐ「仕上げ湯」の効果も期待できる。
このように、「美人の湯」＋「美人の仕上げの湯」という ダブル効果が期待できるのだ。

水素イオン指数を表すpH（ペーハー）は、8.22。
弱アルカリ性の柔らかい泉質で、ほのかな新陳代謝により、美肌効果をもたらしてくれる。

十勝川温泉付近には、国内では稀な花崗岩の礫層（れきそう＝小石の集まった層）が見られる。
花崗岩は、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウムなどのミネラルや、その他の微量元素を含む。
モールの有機物質に加え、通常の温泉の適応症、さらに花崗岩のミネラル効果と、トリプルでカラダに作用する泉質なのだ。


ロビーや大浴場以外、この宿のパブリックにあたるのは、2階に備わったアロマテラピーサロンぐらい（詳しくはおまけページ）。
良質な温泉と、居心地のいい客室があれば、他に無駄な娯楽施設など、必要ないだろう。
ただし、「三余庵」にお泊りの方は、隣接する姉妹館の「十勝川温泉第一ホテル」にある施設も利用できる。

ロビー周辺について、補足しておこう。
この宿の一つのウリになっているのが、併設された「BAR道草」。
「道草」という名前は、文豪・夏目漱石（1867－1916年）の自伝的小説から名付けられた。
ドリンクで使われるグラスは、音更町万年のガラス工房「フンベ」主宰である勝野好則氏が制作した物を採用。
北海道産の銘酒、ワイン、焼酎などが各種用意されている。
「三余庵」オリジナルラベルの大吟醸酒や、鹿児島県の本格芋焼酎「晴耕雨読」も常備。
夜は、十勝川に掛かるライトアップされた十勝中央大橋を眺めながら、静かにお酒が楽しめるだろう。

ロビーに併設された「BAR道草」

ロビーから庭の方に出てみると、広大な芝生を望むテラスが備わる。
ここでゆっくり珈琲などいただきながら、十勝の四季を感じてみてはいかがだろうか。
この芝生は、パークゴルフ場としても機能する（冬季は不可）。
無料でできるので湯浴みの前に一汗かくのもいいだろう。

庭を望むテラス