十勝川温泉　三余庵 さんよあん TokachigawaOnsen SANYOAN

この宿というより、「十勝川温泉」という温泉地は、他から羨むような、「モール温泉」という素晴らしい温泉を所有している。
「モール」とは、ドイツ語で湿原や原野（Moor）を意味し、モール温泉とは、亜炭層（地下に堆積した太古の植物が含まれた地層）から湧き出るもの。
十勝川温泉の場合は、比較的浅い地層から湧き出ているのが特徴。

成分分析をして、温泉法に言えば「ナトリウム－塩化物・炭酸水素塩泉」となる。
一般的に、塩分と重曹の作用により、カラダを温め保湿コーティングしてくれるのと、皮脂や古い角質を落として肌をスベスベにしてくれる、2つの作用が考えられるが、この琥珀色の神秘的な湯を見れば、それだけではない、特別な泉質の温泉ではないかと思ってしまう。

全室に備わる「植物性モール温泉」の秋田檜の内風呂

実際、この温泉に身を委ねれば、肌に対する刺激も少なく、弱アルカリ性という事もあってか、カラダ中が、お湯のベールで包まれているような安心感を覚える。
それは、地球というホシから純粋に生まれた温泉であるという事で、まさに母なる大地に守られている感覚。
もしくは、遥か昔の記憶・・・そう、母の胎内にいた頃の羊水の中にいた頃を思い出すと言ったら、大げさだろうか。

メゾネットタイプ特別室「春の海」の客室露天風呂

私は、小規模で、センスのいい、そして温泉が肌に合う宿を見つけると、プライベートでも利用する事が多い。
それは、宿に泊まるというよりも、別荘で寛ぐようなもの。
しかも、そこには、美味しい料理と、オシャレな客室と、身も心も温めてくれる温泉が用意されている。
「三余庵」は、まさに別荘にしたい温泉宿のひとつ。

客層としては、40代のご夫婦が割合的に多いということだが、リピーターは50代、60代が多いとの事。
最近では、北海道内の方はもちろん、本州からのお客も夏以外でも年々増えてきたようである。
特に冬場は、白鳥の飛来地がすぐ近くという事もあり、逆にオフシーズンという概念がこの宿には当てはまらないかのようだ。
実際、この十勝エリアは、北海道の中では南側に位置し、日照時間も多い地区で、比較的雪も少ないところでもある。
別荘は春夏秋冬、それぞれの楽しみ方を知っていれば楽しいもの。
「三余庵」を別荘代わりにしている方は、幸せ者に違いないのだ。

テラス付き和室「たけくらべ」

実際に、この環境で、この立地で、この内容で別荘を建てたらどうなるだろうか。
自然の厳しい北海道ゆえ、メンテナンスも大変だろう。
だからこそ、この「三余庵」の料金は一般的に高級と言われるが、別荘として考えれば、非常にリーズナブルであると理解できるはず。
電話一本、もしくはネットで予約すれば、快適な客室と、極上の温泉、そして、とびっきりの料理が用意してあるのだから・・・。