落合楼　村上 おちあいろう　むらかみ OCHIAIROU_MURAKAMI

この建物の外壁は洗い出しの塗り壁が施されており、グレーの外観が特徴。赤い屋根瓦は紅柄を用いた鉄製で、戦時中も供出されなかったというもの。
	ロビーから本館にいたる通路の途中にあるこの図書室には、この建物の1階部分。ガラス越しに見る中庭の緑、室内のレトロな風情に浸りながら、館内散策の休憩所として活用したい。ここには、郷土作家である井上靖の自伝であり代表作である「しろばんば」にちなみ、その足跡を辿る案内が見られるようになっている。また、ここにPCを持ち込めば、ＬＡＮ接続でインターネットが利用できる。
配膳棟1階の図書室　<<国指定文化財>>

本館、配膳室と大広間を接続する階段。ここも文化財に登録されている建造物で、階段が「Ｘ」字状に交差している。天井の羽目板は稀少な屋久杉を用いたものだ。急勾配なので昇降の際にはご注意いただきたい。

配膳室階段棟　<<国指定文化財>>

紫檀宴会場　<<国指定文化財>>

団体バスなど訪れず、閑静でこぢんまりとした佇まいのこの宿にあって、なぜこれほどの大きな施設があるのだろうか、という疑問がわく。

この宿の創始者の足立三敏氏は、伊豆の三大金山のひとつ、持越鉱山のオーナーでもあった。当時最盛期を迎えていたというこの金山には、従業員も1,200人いたという。この建物は足立氏が、政財界の要人や関係者をもてなすために造ったといわれている。その証拠にこの宴会棟は、前庭からも直接出入りできるようになっており、静かな宿泊を邪魔しないような工夫もほどこされているのだ。

ここは現在も、宿泊者以外にも開放される機会があり、結婚式の披露宴などに用いられるという。往時の姿そのままの、この壮麗で精緻なつくりの建造物の放つ存在感は、資料や文献が物語る以上に前時代の栄華を偲ばせ、また時代を経た現代においてもその風格を損なわずにいる。

108帖の大広間｢紫檀の間｣。部屋の片側にある床の間は壁面の中央に設けられ、床柱には直径一尺四寸（約42センチ）もの紫檀を用いている。一見すると節くれだった荒々しい印象があるが、よく見るとこの節も人の手で削って描き出したものであることが分かる。現在は禁輸されている紫檀の木だが、これは建築当時（昭和8年ごろ）、東南アジアから輸入されたものだそうだ。欄間の組子細工、上は菊の文様、下は麻の葉文様となっている。また、天井の杉板は､樹齢400年級の大木を切り出したものばかりで、徳川の御用林であった天城のもの。 室内のランプは昭和30年代のものだそうだが､廊下のランプ、ガラス窓などは建造当初から使われているもの。ここでも随所に見られる往時の技術の高さとレトロなデザインの意匠が、このお宿の風情に一花添えるようである。

2階　大広間「紫檀の間」

約30帖の中広間が3室用意されている。座敷席、椅子席と用意される。

1階　中広間「梅一」