忘れの里 雅叙苑 - コラム~総括(2)-
現在の「忘れの里 雅叙苑」の人気ぶりは、いまさら語ることもないだろうが、それは一朝一夕にできたわけではもちろんない。 オーナー田島健夫さん(昭和20年生まれ)と女将さんの悦子さん(昭和22年生まれ)の苦労と努力があったからこそ、今の「雅叙苑」があるのだ。 「雅叙苑」の創業は昭和45年(1970年)4月。 田島社長は、この時25歳。 当時は、何の変哲もない、木造2階建ての建物で、1階が広間で2階に客室が5つあるだけの小さな宿であった。 今や全国区の人気を誇り、憧れの宿として名をはせている宿の面影は、その当時はなかった。 いわゆる安普請の宿であった。 |
![]() |
苑内を散歩する放し飼いのニワトリ(2013年2月撮影) |
・・・・・田島健夫さんは、古くから湯治場を営む家の次男として生まれた。 大学卒業後、鹿児島市内の金融機関に就職する。ところが、そろばんが不得手、そして何といっても事務処理の仕事が苦手で、すぐに外回りの仕事に変えられたという。 昭和45年は、日本は高度成長期の頃、日航機よど号ハイジャック事件、ビートルズが解散、プロ野球・読売ジャイアンツがV6・・・などがあった年だ。 国内の旅行業界を振り返ると、団塊の世代による新婚旅行ブームの真っ只中の時代であった。その旅行先で人気だったのは宮崎、大分(別府)、鹿児島(霧島)といった九州の観光地。 金融機関に勤めながらも、その現象のもの凄さを感じ、実家の母親に地元客相手の湯治旅館ではなくて、新婚旅行の客が訪れるような観光旅館をやらねば・・・と説いていた。実際に九州の旅館・ホテルは空前の好景気に沸いていた。 「それなら自分でやってみろ。」 この一言で健夫さんは宿を新たに作る事を決意する。 「雅叙苑」の誕生のきっかけとなる。 現在の宿の敷地は、もともと田島家が持っていた土地で、湯治旅館「たじま本館」の小さな別館が建っていた。それが大雨で流されて激甚災害の認定を受け、復興資金として1,000万円を貸してくれるという状況も、宿運営に走らせた。 すぐに金融機関を退社し、前述の木造2階建て、客室数5室の宿を作ったのだ。 「これから新婚のお客さんが来る!」田島社長は確信していた。 |
![]() |
雅叙苑の敷地から天降川をのぞむ |
ところが実際は違った。 まったく新婚客が来なかったのだ。 客といえば、当時、九州電力のダム工事に携わっていた土木作業員がほとんどだった。 ハネムーン旅館になるはずが、飯場のような宿になってしまった。 そんな折り、田島社長は現在の女将さん、悦子さんと翌年の昭和46年4月10日に結婚する。 悦子さんも別の金融機関で働いていた。 同業の金融機関同士でバレーボール大会などの集まりがあり、そこで知り合った。 田島社長が片道2時間もかかるにも関わらず、何度でも悦子さんの住む実家に行き、プロポーズを繰り返した。 悦子さんは「99%結婚しません」と田島社長に言うと、「それじゃ1%は望みがあるんだな」と言ったという。この超ポジティブ思考が、彼の真骨頂。 悦子さんがうんと言わないと、今度は両親に頭を下げてきたという。 そして、何度も訪ねてくる田島社長を見て、悦子さんの父に「こんなに一人の男に思われているなら女として幸せじゃないのか」と言わせ、そして悦子さんは遂に結婚を決意する。 正式なプロポーズから半年が経っていた。 「なぜ、あの時100%結婚しません」と言わなかったのか、なぜ「99%」と言ってしまったのか、今でも不思議だと女将さんは笑いながら語ってくれた。 |
![]() |
しかし、悦子さんは実際に宿に入り、女将として働き始めたが、客の入りは1年前となんら変わらない。 借金を返すのに精一杯の毎日が続いた。 その頃を女将さんは「振り返りたくないし、思い出したくもない。」という。 |
特に最初の1年間は、女将さんは、いつも夕方になると寂しくなり、実家にどうやって帰ろうかなどと泣きながら考えていたという。 それもそうだろう、今まで公務員の家庭で育ち、金融機関に勤めて、自営業の大変さをよく知っていたからだ。 絶対に商売をしている人には嫁がないと心に決めていたのに、結婚してしまった。 その後悔の念に苛まれていたというのだ。 |
忘れの里 雅叙苑 宿泊レポート
コラム
「忘れの里 雅叙苑」は、鹿児島県北部、霧島温泉より南側に位置し、鹿児島空港からクルマで15分のロケーションの妙見温泉にある。妙見温泉は、天降(あもり)川に面していくつかの温泉旅館が建ち並んでいるが、元々は湯治場として地元の人々に愛されてきた素朴な温泉地なのだ.....
貸切&客室露天 レポート
「忘れの里 雅叙苑」と言えば、部屋に温泉風呂が付いているイメージがあるが、外にも個性的な貸切風呂が用意されている。すべての湯舟が源泉かけ流しで、自家源泉を使用。泉質は「ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩泉」.....
施設&温泉 レポート
「忘れの里 雅叙苑」は、妙見温泉の中心地、天降川(あもりがわ)に沿った細い道を、木の看板を手がかりに坂道を下っていくと辿り着く。敷地は天降川沿いに横長の形。苑内に入ると「この道 にわとり優先」の看板が目に入る。そして、茅葺きの屋根がはっきりと見えてきた.....
客室 レポート
客室のタイプは大きく分けると5タイプに分けられる。まず全10室中、お風呂リビングは4室、露天風呂付き客室は4室あり、それぞれ独立した離れとなっている。いずれも昔からあった、地元・鹿児島の茅葺きの古民家を移築して、改装したものだ.....
料理 レポート
まず、「忘れの里 雅叙苑」の料理を紹介する前に、基本の「食材」について説明させていただく。実に驚くべき事だが、実に食材の90%以上は、自給自足で賄っているという点だ。野菜はほぼすべて、「天空の森」の自家菜園で作られている。しかも「オーガニック(有機栽培)」であり「無農薬」.....
おまけ
「雅叙苑」のスタッフの接客の基本は、ベッタリお客様にまとわりつくような事はしない。プライベートな空間にはできるだけ近づかないスタンスだ。それでいて、客の要望を汲み取ってくれている。これほどの人気旅館でありながら、敷居の高さを感じさせないのはなぜか?.....
この宿のキーワード | |||
---|---|---|---|
元祖・露天風呂付き客室の宿 | |||
薩摩の生活文化を伝承する「日本旅館」 | |||
美肌とリラックス効果のある温泉をかけ流し | |||
無農薬・有機栽培の自家菜園からの食材 | |||
新提案・お風呂リビングが大評判 | |||
こんな人はOK | |||
・本当の地産池消の料理を食べたい方 ・旅館に故郷の郷愁を感じたい方 |
|||
こんな人はNG | |||
・批評家気取りで粗探しが趣味の方 ・賑やかに遊ぶ事が温泉旅行だと思っている方 |
IN | 14:00 | ||
---|---|---|---|
OUT | 12:00 | ||
カード使用 | 可(VISA / JCB / AMEX / DINERS / UC / DC / MASTER) | ||
部屋の眺望 | 川・山 | ||
部屋食 | 食事処「不忘舎」or「いちょうの間」 | ||
夕食の内容 | 自家栽培の野菜や地元の食材をメインとした田舎料理 | ||
朝食の内容 | お魚と玉子の焼き方をチョイスできる山里料理 |
公式HPネット予約特典 | 【ベストレート(最低価格)保証】公式HPからの予約が一番お得な料金になっております。 公式HP予約限定★ワンドリンクサービス:オーガニックソーダ or 本日のおすすめ焼酎(グラス) |
||
---|---|---|---|
お得なプラン | インターネット優先プランなど、詳細は公式をチェック★ | ||
和室スイート「空(そら)」※2022年リニューアル | ¥110,150~ 休前日アップ料金 ¥5,500~ 和室25.5帖(ベッド付き)+ 半露天内湯 + 風呂付き縁側 + トイレ(定員2~5名) |
||
和室スイート「光(ひかり)」※2022年リニューアル | ¥93,650~ 休前日アップ料金 ¥5,500~ 和室24.5帖(ベッド付き)+ 半露天内湯 + 縁側 + トイレ(定員2~5名) |
||
Etype お風呂リビング付離れ特別室「椿」 | ¥65,050~ 休前日アップ料金 ¥5,500~ 1F:リビング(箱火鉢)+2F:和室6帖+6帖+お風呂リビング+シャワーブース+トイレ(定員2~5名) |
||
Dtype 露天風呂付離れ「かぜ」 | ¥55,150~ 休前日アップ料金 ¥5,500~ 和室6帖+4.5帖+ウッドテラス+デイベッド+客室露天風呂+露天シャワーブース+トイレ(定員2~4名) |
||
Btype お風呂リビング付離れ | ¥52,950~ 休前日アップ料金 ¥5,500~ 和室6帖+次の間+お風呂リビング+トイレ。(定員2~3名) |
創業/改築 | 創業:1970年(昭和45年)/改築:2022年(令和4年) | ||
---|---|---|---|
部屋数 | 全8室 (露天風呂付客室8室※お風呂リビング含む) | ||
収容人数 | 30名 | ||
貸切風呂 | 貸切露天風呂×3(男女別大浴場の時間貸し&うたせ湯・ラムネ湯) 料金 :宿泊の場合 無料 利用時間 :24時間 ※日帰り利用の12:00~15:00以外 ※宿泊客の休前日(繁忙日)の貸切可 予約方法 :予約なし(先着順) 眺望 :川・山 |
||
大浴場・他 | 男女別大浴場(男女の入れ替えなし) 利用時間:24時間 ※清掃時間以外 |
||
駐車場 | 10台 | ||
ペット | 不可 | ||
バリアフリー | - | ||
エステ・マッサージ | あり(天降川沿いのエステルーム「雅叙苑スパ」) | ||
インターネット | 全客無線LAN(Wi-Fi)&有線LAN対応 | ||
DVD | - | ||
TVチャンネル | NHK2局、民放4局 | ||
施設 | 囲炉裏サロン(カフェ&バー) / 茶房 不忘舎 / お土産処 / エステルーム / 男女別大浴場「建湯」(貸切利用枠あり) / 貸切風呂「うたせラムネ湯」 | ||
冷蔵庫のシステム | スイッチ付き自動計算(持ち込みのドリンクを入れるスペースあり/冷凍室あり) | ||
自動販売機 | なし | ||
売店 | あり |
浴衣 | ◎ | バスタオル | ◎ |
タオル | ◎ | 石鹸 | ◎ |
ボディソープ | ◎ | シャンプー | ◎ |
コンディショナー | ◎ | リンスinシャンプー | ◎ |
シャワーキャップ | ◎ | 歯ブラシ | ◎ |
ドライヤー | ◎ | ブラシ | ◎ |
くし | ◎ | カミソリ | ◎ |
綿棒 | ◎ | 洗浄機付きトイレ | ◎ |
車いす | - | ||
---|---|---|---|
お子様 | - | ||
外国語 | - |
オススメお土産 | 地鶏燻製、黒豚ベーコン ※宿のオリジナル | ||
---|---|---|---|
近くのコンビニ | 車で10分 | ||
携帯アンテナ | ◎docomo | ◎au | ×softbank |
料金 | - | ||
---|---|---|---|
利用時間 | - | ||
※食事付きプラン(要予約) | |||
料金 | - | ||
食事の内容 | - | ||
設定日 | - | ||
受付時間 | - | ||
その他 | - |
料金 | - | ||
---|---|---|---|
利用時間 | - | ||
その他 | - |
電車 | 鹿児島市内から林田バス利用の場合、特急で約1時間10分。妙見温泉で下車。 | ||
---|---|---|---|
送迎 | なし | ||
クルマ | ・鹿児島空港よりクルマで約15分。 ・九州自動車道・溝辺インターよりクルマで約15分。 ・鹿児島市内からは九州自動車道を経由し、クルマで約50分。 |
||
周辺観光スポット | 和気神社・和気公園、犬飼の滝、霧島神宮・霧島連山 | ||
---|---|---|---|
レクリエーション(観光農園、公園など) | みやまコンセール | ||
スポーツ | - | ||
スタッフより | ![]() お客様には非日常の雰囲気の中で時をすごしていただけるように心がけております。 |
||
取材日 | 2018/02/25 | ||
一部情報更新日 | 2023/06/23 | ||
※予約問合せの際は、必ず「貸切温泉どっとこむ」を見たと言ってください。 |
ページの上に戻る |
Socials
この宿の記事制作者

温泉コム株式会社 代表取締役
30年以上前から、全国の温泉宿をまわり続け、「貸切風呂」の必要性を宿主に説いていた。 今でも、一年の半分を温泉宿で過ごす旅人でもある。 コラムニスト、カメラマン、ドローンパイロットの他に、ホームページのデザイン、コンサルタント業務もこなす。