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上州・群馬県の北西部に位置する「草津温泉」は、言わずと知れた天下の名湯。
「地蔵」「湯畑」「白旗」「西の河原」「万代鉱」「わたの湯」など主に6つの源泉を有するが、湧出量はすべて合わせて毎分36,000リットル(!)というから、日本国内でも有数の湯量の多さを誇る。
また、これがモーターを使った、いわゆる汲み上げる動力泉ではなく、温泉の理想形とされる自然湧出温泉の中で比較すれば、草津の湯は日本一の湧出量となるのだ。
「草津温泉」の歴史も古く、古墳時代、日本武尊が東征帰途の際に温泉を発見した説や、奈良時代に行基が開湯したという説もある。
または建久4年(1193年)の鎌倉時代、浅間山で巻狩りを行った際に源頼朝が発見したという伝説を持つほど、古くから知られた湯治場であった。
室町時代の文明4年(1472年)、蓮如が入湯。文亀2年(1491年)、歌人の宗祇が入湯したという記録もある。
安土桃山時代に入ると、天正16年(1587年)、豊臣秀吉の妹、朝日姫が入湯。
慶長元年(1596年)には、秀吉が病気療養中の徳川家康に草津の効能を説き、湯治を奨めたという文献も残っている。それにより、家康は草津の湯を江戸城に運ばせたという。
慶長3年(1598年)には、加賀百万石の大名、前田利家も入湯した記録がある。
江戸時代初期は真田氏の沼田藩、その後は天領として幕府の直轄支配を受けている。現在と比べて交通は不便にもかかわらず、湯治客で賑わいは年間1万人を超えていたという。
江戸時代初期に活躍した儒学者・林羅山は、「有馬」「下呂」そして「草津」の3つを、日本の三名泉として讃えた。
近世を通じて60軒の湯宿があり、幕末には「草津千軒江戸構え」といわれたほど栄えていた。
18世紀初頭になると、「かこい湯」・「幕湯」という貸し切り湯の習慣ができ、のちに内湯(宿の中のお風呂)が設けられるようになった。
享保2年(1717年)には、八代将軍・徳川吉宗が、家康と同じく草津の湯を江戸城まで運ばせた。その記録は、「御汲み上げの湯」として、湯畑に石碑に残されている。
文化5年(1808年)には、俳人・小林一茶も入湯している。
明治時代に入ると、明治11年(1878年)にドイツ人医学者・ベルツ博士が初めて草津に入り、後に世界に草津温泉を紹介することになる。
大正7年(1918年)、詩人・平井晩村が入湯。紀行文「湯けむり」を著し、草津節のもとともいわれる2つの歌を書き残す。「草津よいとこ白根の雪に暑さ知らずの風が吹く」「草津よいとこ里への土産袖に湯花の香が残る」などがそうだ。
大正11年(1922年)には、作家・志賀直哉が入湯している。
昭和4年(1929年)には、詩人の尾崎喜八、高村光太郎、竹久夢二が入湯。
昭和8年(1933年)には、歌人・斎藤茂吉が入湯している。
草津温泉と言えば、「湯畑」がシンボル的な存在。毎分4,000リットルもの湯量が、ここに溢れる。温泉街の中心地でもある。
その「湯畑」から歩いてすぐのところに「益成屋旅館」がある。
江戸情緒を醸し出す外観は、益成屋旅館の性格を物語る。木造3階建ての佇まいは、日本人の琴線に触れる要素が満ち溢れていた。
エントランス・ロビーは、掃除が行き届き、欅の廊下はピカピカに光っていた。その一角にある囲炉裏の横には、女将お手製の押し花が飾られていた。
そして、やはり宿の自慢は温泉だ。「益成屋」の大浴場は、「弁天の湯」と呼ぶ。
草津温泉の6つの主な源泉のひとつ「白旗の湯」を使用。この源泉は、湯畑のすぐ近くに湧出する温泉で、泉質名は「含硫黄・酸性−アルミニウム−硫酸塩・塩化物温泉」。pH2.0の酸性のお湯は、慢性皮膚病、慢性婦人病、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、きりきず、やけど、虚弱児童に特にいいとされる。
もちろん、源泉100%かけ流しのお湯。豊富な湯量を背景に、「益成屋」だけでなく、ほとんどの旅館は循環ろ過装置を使ってのお湯の二次使用(リサイクル)はせず、常に新しいお湯を湯舟に注ぎ、オーバーフローしているのだ。そしてそのお湯は圧倒的な消毒・殺菌作用を持つ。
少し白く濁ったお湯は神秘的でもあるが、その極上のお湯に浸かり、カラダの芯まで温泉を染み込ませてほしい。
ちなみに、草津温泉は泉質が強烈なため、湯治後に肌の手入れのために入る、「草津の上がり湯」なる温泉地が周辺に複数できた。四万温泉もそのひとつだ。
この大浴場「弁天の湯」は平成20年3月にリニューアルしたばかり。浴槽の枠と洗い場には、一級品の無節の檜を使用した贅沢なもの。極上のお湯と檜の相性はやはりいい。
この素晴らしい泉質のお湯があるのだから、露天風呂はいらない。目をつむって、温泉に集中して湯浴みをしていただきたい。
「益成屋」は「和風村」の一員でもある。「和風村」とは、古き良き時代の草津温泉を再現しようと集まった14軒の老舗宿の総称。
14軒のお宿に宿泊の際、「湯めぐり手形」(1冊3名様まで有効/1,000円)を購入し、始めに草津山光泉寺「薬師堂」にお参りする。寺務所に用意されたご朱印を通行手形に押してから、好みの宿の内湯を巡るというシステム。入浴する際はさらに一人あたり700円の入浴料が必要となる。
また、入浴の際に、その通行手形に各宿の記念スタンプが押される。5湯をめぐると万願となり、感謝状と記念品が贈呈されるという楽しみもあるようだ。なお、「湯めぐり手形」は2年間有効との事。
それぞれ、泉質も異なり、意匠の違うお湯に入るのも楽しい。
館内に「押し花アートギャラリー」があった。
女将の内堀紀美恵さん、若女将の明恵さんによる押し花作品が、ところ狭しと飾られている。
その作品は着色や薬品などは一切使用していない。それでいて、変色しないで長期間色を保ち続けるから不思議だ。
それらの作品を購入することもできるが、女将、若女将による「押花体験」も人気だ。
ハガキ大の台紙に、女将が何年もかけて採取した花を材料に、押花の体験をしていただき記念に持ち帰ることができる。 20cm×20cmの大きさで額付で4,500円(税込)。
草津温泉の旅の思い出にお勧めだ。
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