「ランプの宿」の創業は天正7年(1579年)とされる。時代は戦国の世がようやく落ち着きを見せ、織田信長が着々と「天下布武」を推進している頃である。
「ランプの宿」オーナーの刀祢(とね)秀一氏の祖先は、平時忠(1130−1189年)と同盟関係にあった刀禰水軍の末裔らしい。平時忠は清盛の義理の弟。壇ノ浦の戦い(1185年)の後、世が源氏の時代になり、奥能登に移り、平の姓を捨て「時国」姓を名乗った。その後、地元では有数の豪農として繁栄し、子孫も代々繁栄し、現在では石川県輪島市には国の重要文化財として「時国家」の重厚な建物(1831年頃に建築されたもの)が残されている。
さて、刀禰氏の水軍は、その後、北前船(江戸時代から明治30年代まで、大阪と蝦夷地を結ぶ日本海航路に就航した廻船)の事業に進出し、長い間繁栄を誇った。そして、「ランプの宿」創業年と言われる天正7年(1579年)に、この地に船宿を建築したのだ。しかし、その頃は刀祢氏自身が運営していたのではなかった。明治22年頃、一家は没落の憂き目にあい、その航路のひとつであったであろう、現在のよしが浦温泉の地に知人に運営を任せていた船宿に戻り、現在の刀祢氏の運営(12代目から)に入ったわけだ。
現オーナーの14代目当主・刀祢秀一氏(昭和27年生まれ)は、そんな歴史を背負いながら、ここ数年で現在の「ランプの宿」を全国的な超人気宿に生まれ変わらせた。国定公園内にあるこの地は、新築などは様々な条件をクリアしないとなかなか許可の下りないエリアなのであるから、相当なご苦労があったはずである。
「ランプの宿」といえば、すぐ連想するのは、そのアクセスの悪さだろう。悪いというよりも「遠い」と言った表現の方が正確かもしれないが。
石川県能登半島の突端に位置し、現在でも金沢からでもクルマでゆうに3時間は覚悟しなければならないからだ。
でも、逆にこのアクセスの「遠さ」は、現代では人気宿のひとつの魅力になっている場合がある。気軽に行ける場所であれば、それは「憧れの地」には成り得ない。この狭い国土と言われる日本のなかでも、海外に行くのとほぼ同じエネルギーを使わねば・・・と思ってしまう辺境の地の宿はいくつかある。
それに共通しているのは、未だに手つかずの自然が存在し、よくある宿泊施設とは一味違ったアイデンティティを醸し出していることだ。
その範疇の中に「ランプの宿」はある。実際、地元・石川県民の中でも、「行ったことは無いが、一度は行きたい」場所であると思っている方が多いだろうと容易に推測できる。
ここで、現在の「ランプの宿」の現状(2008年1月現在)をレポートしよう。長いドライブの後、辿り着いたのは意外に大きな駐車場。そこからクルマから降りて海側の谷の方へ歩いていくと、日本海の絶景に驚くのと同時に宿が小さな入り江に弓状に建てられている様を眼下に見て、さらに感動を覚える。
その急坂をゆっくり歩いて下りていくと、噂の露天風呂付き離れの「舟屋造り」の建物が4棟あり、その先には“賛否両論”のプールが現れ、その先には日本海の荒々しい波しぶきがすぐそばに見える。そして、やっと本館のフロントに辿り着く。
まず、客室の構成から紹介すると、全14室のうち、露天風呂付き客室は8室。一般客室は6室。
露天風呂付き客室8室のうち4室は、人気の「波の離宮」と呼ばれるメゾネット型離れ客室になる。前述の“賛否両論”のプールの上に浮かぶように建てられている。陽が暮れはじめるとその“賛否両論”が“賛美”に変わっていく。そのプールはライトアップされ、人工的なプールの外観は闇に消され、幻想的な雰囲気さえ漂ってくる。日が沈んでも、かすかに岩礁に砕け散る波しぶきも見え、もちろんその波しぶきの音は潮騒のコンサートを
奏でる。
ボラボラ島や、モルディブにあるような水上コテージをイメージしたようであるが、ここは前述のように国定公園の中。海岸にコテージを建てられるわけはなく、敷地内にプールを配し、そこに離れを建てたというわけだ。
しかも、その建物は、伝統的な「舟屋造り」をイメージしたものだ。「舟屋造り」とは、一般的には海に接する漁村に古くから見られる建築方法で、1階は船を格納する船小屋、2階が住まいという独特の合理的な造りとなっている。京都府の天の橋立近くの伊根町に建つ家屋が有名だが、「ランプの宿」の離れは1階が海側にオープンデッキを配する和室、2階も同じように和室の構成となっている。
そして、このオープンデッキに露天風呂が新設されたのが2007年7月。さらに人気に拍車をかけたわけである。
本館にも4室、露天風呂を備える部屋がある。1Fにある「月あかり」7号室、6号室は、広々とした2間続きの和室に、広々としたオープンテラスが付く。
2Fの「月あかり」3号室、5号室の露天風呂付き客室はロフト型。しかも、その2階エリアには、電動でおりてくるハシゴを使っていく仕掛けとなっている、なんともユニークな演出だ。電動ハシゴでロフトに上がれば、そこは、ちょっとしたお昼寝スペース。1階は12帖の和室。
そして、一般客室「花こよみ」は全部で6室。この宿の中では一番リーズナブルに泊まれるわけであるが、カップル、ご夫婦であれば、やはりプールに浮かぶ貸切露天風呂棟「波の湯」を利用すれば、ゴージャス感は満喫できるであろう。
本館の建物は、なかなか歴史を感じさせる空間がひろがっている。天井や柱など、そこかしこに古木が見え隠れするが、よく温泉宿で見かける演出めいたものではない。「ランプの宿」が建つこのエリアは国定公園内。だからこそ新築の許可がなかなか出ない場所でもある。だからこそ古い家屋をリフォームしながら現在に至っている。オーナー曰く、新築よりもコストがかかっているかもしれない・・・との事。
夜になると、中庭の様子も一変する。前記のようにプール(プライベートビーチ)がライトアップされるせいだ。幻想的な雰囲気に変わっていく。目の前の日本海の岩礁の自然美と青々と光るリゾートホテルのプールを彷彿させる2つの真逆なコントラストはまさに非日常の世界。
男女別の大浴場もインパクトがある。男性用の露天風呂は内風呂を通って、海のすぐ近くに造られた湯舟は、屋根も何もないまったくのオープンエア。「小さな入り江の露天風呂」と称されたお風呂は、日本海を見渡すような、豪快なお風呂であった。こちらも夜になると湯舟がライトアップされた。
女性用のお風呂は、「青の洞窟風呂」と呼ばれている。女風呂はやはり目隠しの理由もあって洞窟風呂風になっており、男湯ほど開放的ではないが、夜になると浴槽がライトアップされ、ファンタジックな空間になる。こちらも内風呂の先に露天風呂がある。
温泉の泉質は「ナトリウム−塩化物泉」。泉温は15℃程度なので、厳密には鉱泉の部類に入る。こちらは敷地内にボーリングすることなく自噴する源泉は、量は少ないが、この宿ができる前から湧き出ているという。
もうひとつ、この宿で忘れてはならないのは「わき水」。自噴の温泉だけでは、お風呂の量が足りないので利用していた湧き水は、とてつもない力を持つ水だった。近年、新聞でも紹介された記事を引用しよう。
記事の見出しは「珠洲に世紀を超えた“純水”」。「113年間腐らず」。「世界一ピュア(純粋)な水として近くギネスブックに申請」。・・・1889年(明治22年)6月に刀祢社長の大祖父の故理一氏が、水質確認のため採取した湧き水が2002年になって母屋の中で発見された。一升瓶(1.8リットル)に入っており、カルシウムなどミネラル分の沈殿物が少し見られたが、全体に濁りのない状態だった。県能登北部保健所(輪島市)に水質調査を依頼した結果、不純物がゼロで、飲用可能であることが判明した。また、1969年(昭和44年)に採取した33年前の水と比較したところ、113年前の方がより浄化されていることも確認された。
この水には、ミネラル分のほか塩素イオンが多く含まれて強い殺菌力があり、雑菌類が消滅したことが推測されるという。水は静止状態だと腐りやすく、普通の水道水なら一ヶ月程度で交換が必要になる。キリスト教で「聖水」として知られるドイツの「ルルドの水」でも5年が限界という。
同温泉は、マムシの解毒作用が高いとして、江戸時代から約400年間、湯治場として地域の人たちに重宝されてきた。アトピーなどの皮膚炎や水虫、虫刺され、神経痛、リウマチにも効果があるという。・・・(2002年7月4日付け 北陸中日新聞より抜粋)
料理は基本的には本館の食事処でいただく。離れに宿泊している客は個室になる場合が多いが、その他の客はいわゆる大広間で食すことになる。
今回は露天風呂付き離れ「波の離宮」に宿泊した際の特別メニューをご紹介しよう(2008年1月取材)。
まず、前菜として大皿に盛られた料理が登場。“このわたとろろ”(このわたは、ナマコの腸管を塩漬けにして作った塩辛)と子持ち昆布、イカの松前漬けと干口子(ひぐちこ:ナマコの卵巣を干したもの)、ふぐの卵巣かまぼこ、巻鰤(ブリの塩漬け)とふぐの卵巣を3年塩漬けにして焼いたもの、焼スイートきんとん(サツマイモと栗のきんとん/サツマイモは石川産の五郎島金時)にいくら、そしてお皿の真ん中には、蒸し鮑と、蒸しサザエ・・・という、珍味と豪華食材のオンパレードだ。
お造りは、ヒラメ、ブリ、そして甘海老。奥能登の新鮮な魚介類は、蛸島港、宇出津(うしつ)港、珠洲(すず)港など、地元の漁港から取り寄せる。
焼物は鮑の殻焼き。中にはタラ、椎茸、ブロッコリも入っていた。能登半島の東の付け根に位置する津幡町で栽培されているマコモダケが添えられていた。サクサクとした食感が楽しい。
ここで、茹でガニが登場。もちろん、宿の近くの蛸島港で水揚げされた日本海のズワイガニだ。ズワイガニは、日本海の大陸棚の水深200〜400mに生息する。ぎっしり身が詰まっているのが特徴。山陰では松葉蟹と呼ばれている。
次は、カニ刺し。今度は、紅ズワイガニが出された。紅ズワイガニは、日本海の水深約500〜2000mの深海に棲むカニで、身に甘みがあって水分の多いのが特徴。
蕪の煮物には、蟹あんかけ。野菜にも蟹は合うようだ。
そして、蟹すき鍋。カニの出汁がきいてスープも美味しい。
さらに、ここで焼きガニが登場。ここまでで相当お腹はいっぱいのはずが、この焼きガニの香りに誘われて、どんどん口に入る。ポン酢か奥能登の天然塩でいただく。かに味噌も香ばしくなってまさに絶品だ。
蓮蒸しの吸い物も出た。金沢産の蓮根(カナレンコン)のすり身、鯛、カニが入っている。
白子の柚子釜蒸しも美味しかった。この白子はタラの精巣。
締めはカニご飯に、カニ味噌汁、そしてお漬物。カニ味噌汁には、地元産の岩のりが入っていた。
デザートは、みかんシャーベットに、りんごのコンポートのせと、ゆずのシャーベットが出された。
このように、奥能登の海の幸がメインの料理が並ぶが、全体的なボリュームは多すぎるきらいがある。これがずべて残さず食べられれば相当なものだ。しかしながら、ひとつひとつの食材はよく吟味されており、満足いくものであったことは間違いない。いくら「ランプの宿」が今風にリニューアルされても、夕食は昔のまま、素朴だけれども一番美味しい状態で客に供されるようにしているのだろう。
ところで、「幻の黄金ガニ」をご存知だろうか?「幻の黄金ガニ」とは、その名の通り、ほとんど市場に出まわらない希少価値の高いズワイガニのこと。20,000〜30,000バイに1パイしか水揚げされないということから「幻の・・・」というらしい。そして、「黄金」と名付けたのは茹でると口が金色になるからとか。
ズワイガニは通常、日本海の大陸棚の水深200〜400mに生息する。紅ズワイガニは、日本海の水深約500〜2000mの深海に棲むカニ。その種類の違うカニが、海流のせいか、原因は不明だが、ある水深で出会い、交配して生まれたのが、このカニらしい。つまり、ズワイガニと紅ズワイガニのハーフ。あまりに美味しいということで、ファンも多いということだが、ここ「ランプの宿」では、手に入った時のみお客様にお出しするとのこと。
宿の公式HPのブログでも画像を公開しているので、ぜひチェックしてください。
朝食も豪華なラインナップだ。ひれ黒カレイの一夜干し、黒ゴマ味噌かけの風呂吹き大根、クルマ麩、豆腐、水菜のいしる鍋風の湯豆腐が並んだ。「いしる」とはイカの魚醤で、イワシの魚醤は「よしる」と呼ぶ。いずれも石川県の代表的な醤油で、ここ「ランプの宿」でもオリジナルラベルの「いしる」「よしる」を購入することができる。
岩のりも、もちろん地元産。あぶったものをだし汁に入れて食べる。こちらも売店で購入可能。自家製の岩のりの佃煮、マコモダケのキンピラ、大根しらすの他、玉子焼きに、青さの味噌汁も美味しい。
「アロマセラピーマッサージ」も人気だ。敷地内中央に位置する建物の2階(部屋名「灯台」)で施術する。100%天然の植物から抽出したオイルを使用。アロマの香りによって、心とカラダを癒してくれる。温泉との相乗効果も期待できそうだ。1日3組限定で、現在では男性も受け付けている。テラスからの眺めはこの宿で一番かもしれない。メニューは30分、60分、90分コースから選べるようだ。
このコーナーを仕切っているのは、女将の亜希子さん。今から10〜11年前、地元テレビ局のレポーターだった亜希子さんに一目ぼれしたオーナーは、知人をたより、その年の2月の終わりに紹介してもらい、ボラボラ島へエスコート(4月中旬)し、その年の5月には結納までいき、秋には結婚したという、まさに速攻のプロポーズであったと聞いた。
そんな愛妻にも恵まれ、オーナーはこの宿の次なる展開を模索し始めるのである。
「ランプの宿」周辺には自然の造形物でも非常にユニークなものがある。宿の手前15kmの半島の西側の道路を、クルマで気をつけて走れば見つかるはずなのが奇岩「ゴジラ岩」。まさにそのままゴジラに見える。ちなみに、愛称がゴジラこと大リーグ・ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手もここ石川県出身。
また、その先の45kmの輪島市には、「白米の千枚田」がある。海に面した崖のような急斜面に、いわゆるライステラス(棚田)を眺めることのできるポイントがある。実際は1004枚もの水田が連なっているとの事。平成13年に国指定の名勝となった。
「ランプの宿」はお土産も充実している。特にオススメは、やはり天然塩だろう。
「ランプの宿」オリジナルラベル「天然塩」の大瓶と中瓶の塩は、日本でただ一ヶ所、珠洲(すず)の仁江海岸で、500年前から伝わる製塩法、「揚げ浜塩田」にて作られた天然塩なのだ。海水を塩田と呼ばれる平らな砂面にまんべんなく撒き、乾燥させた後、砂から塩だけを抽出し、さらに沸騰させて生粋の塩分だけ取り出す気の遠くなりそうな手間のかかった塩。
小瓶も日本海の海水から精製された天然の焼き塩。能登半島は、千島海流と対馬暖流が交錯する日本有数の地で、多種良質のミネラルを大量に含んでいる。古来よりこの地方の塩は「白銀の塩」とも呼ばれ、北前船によって海外にも輸出されていたという。
その他、オリジナルラベル「ハーブ塩」はサラダ用とシーフード用が販売されていた。サラダ用は、アップルミント、レモンパーム、スイートマジョラムなど、サラダに風味を加えるハーブと天然塩をブレンド。玉子料理にも良く合う。シーフード用は、タイム、ローズマリー、アップルミント、パセリなど、魚介類の臭み消しや風味づけに役立つハーブと天然塩をブレンド。いつもの素材に振りかければ一味違った料理に変身。
そして、こちらもオリジナルラベルの「わかめふりかけ」と「あじわい一味」も人気だ。「わかめふりかけ」は、昔は珠洲(すず)ワカメと有機栽培イタリアンパセリと天然塩をブレンド。玉子料理に、天ぷらの衣に、そしてクッキーなどに、緑の色味を楽しめる。「あじわい一味」は、有機栽培のレモンパームと天然塩と一味をブレンド。麺類に、どんぶりに最適。レモンパームが辛党の胃を優しく助けてくれる。
「いしる」と「よしる」という魚で造った醤油もお土産にいい。「いしる」とはイカの魚醤で、イワシの魚醤は「よしる」と呼ぶ。いずれも石川県の代表的な醤油。秋田の「しょっつる」や四国の「いかなご」と並んで三大魚醤と言われている。イカ、イワシを3年かけてじっくり自然熟成したもので、「いしる」は「いしる鍋」に、煮物に、豆腐など色々な料理に利用できる。「よしる」はめんつゆ、味噌汁に少し加えれば深い味わいになる。
海産物もたくさん用意している。「天然岩のり」や「天然青のり」「めかぶ」「手作りかんてん」も人気だ。
そして、日本一贅沢な煮干しと言われている「たい煮干し」や「あご煮干し」「かます煮干し」「能登えび煮干し粉」「あご煮干し粉」など、種類も豊富だ。
オリジナルのグッズ類も充実している。例えば、携帯ストラップは、「ランプの宿」の建物の特徴である舟屋造りと、奥能登では古来より神の使者として崇められていた存在のイルカをモチーフにした人気商品となっている。
その他、マグネット、キーホルダー、ミニタオル、エプロン、あぶらとり紙、絵葉書、有田焼のカップ、輪島塗箸・・・など多岐に及ぶ。
また、オリジナルのワインや日本酒も用意されていた。
伝統工芸品としては、七尾の「朱色無地和ろうそく」と「手描き和ろうそく」もあった。
そして、地元作家の木器も販売されていた。奥能登在住の木彫家・大宮静時氏の作品で、いずれも味わい深い一品ものだ。
お菓子では、やはりオリジナルラベルの「ランプの宿かすていら」が目に付いた。カステラといえば室町時代末期にポルトガルの宣教師によって長崎に伝えられたという歴史は有名であるが、同時期に、ここ能登にも伝来したとの事。
・・・と、この他にも紹介しきれないほどの種類のお土産が売店に並んでいた。せっかく来たのだから、買っておこうと思わせるもの満載のコーナーだなと思わず感心してしまった。
こんな個性的な宿だからこそ、そして辺境の地にあるからこそ、多くの著名人にも愛されてきた。
作家・吉川英治氏は、「新平家物語」執筆の折り、取材に訪れた。
「眠狂四郎」の柴田錬三郎も宿泊している。
作詞家の阿久悠氏は、都はるみの「北の宿」、石川さゆりの「岬がくれの旅の宿」などの作詞活動の際に訪れたの事。
そして、数々のテレビ取材、雑誌、新聞の取材も当たり前のように多い。
現在「ランプの宿」は、公式HPのブログにも書かれているように、「エコツーリズム対策」と「CO2削減」のホテル・旅館部門で日本一になろうと活動を開始している。
小型風力発電の設置や、スタッフ車両の排ガス軽減、厨房のオール電化、ゴミの分別強化・・・などは分かるが、ユニークなのが「宿泊人員の大幅削減」という点。しかも30〜40%削減を目指すとブログには記されているが、これから「ランプの宿」を高級化路線にまっしぐらなのか、今のままで客室数を減らしていくのか(でも、それでは売り上げは落ちていくだろうに)などと、非常に興味深い提案ではある。
とにかく、「ランプの宿」オーナー刀祢秀一氏は、数々の話題を振りまいてくれる人物ということは間違いない。彼は温泉宿の社長でおさまる方では当然なく、例えば、アフリカのマダガスカル島のリゾート開発を大統領自らの要請で任されたり、能登にカジノを誕生させようと活動したりと、その活動範囲は奥能登を遥かに飛び出し、ワールドワイドな活躍ぶりなのだ。
しかもその明るいキャラクターは、宿公式HPからリンクされている「超プライベートブログ」で垣間見ることができる。その内容はとにかく面白いの一言。「ランプの宿」に宿泊を考えている方なら必見だ。
「ランプの宿」を数々のメディアが取り上げているが、その情報の一端を手がかりにし、宿に予約を入れて、初めてこの宿に宿泊する際の“心構え”をアドバイスさせていただくとすれば、まず今まで行った宿泊施設、温泉施設、リゾート施設のことなど全部忘れて、この宿の“面白さ”を単純に楽しんで欲しい。
よく、ここはあそこに似てるだとか、ここはアレだよね・・・などと評論するのは結構だけど、総合的に見れば「ランプの宿」は、まさにオンリーワンの宿なのだ。
干潮時には、岩礁の中を野生のタヌキ、イタチ、テンが歩くのを見かけることもある。その先にはイルカも泳ぐ。
また、能登半島の突端は、332種類の渡り鳥のバードロードと知られ、世界最多とも言われている。
暖流と寒流が交わる日本でも特殊なエリアなので、実の多くの種類の魚介類が水揚げされる。
数キロ先まで大型施設や民家は見当たらず、実は今では「ランプの宿」の敷地面積は約12万坪!
昔ながらの秘湯の温泉宿、絶景のロケーションを堪能できるリゾート、奥能登の海の幸満載の素材重視の和風メニュー、荒波砕く岩礁を眺める露天風呂・・・など、とにかく人気宿の絶対条件を数多く内包しているのは間違いない。かといって海外のセレブ御用達のような豪華リゾートホテルのようなホスピタリティを求めてはいけないし、純和風の高級温泉旅館のような、至れり尽くせりの接客も期待しないほうがいい。
とにかく、ここは刀祢秀一プロデュースの「ランプの宿」の世界を楽しむべきなのだ。
1986年に電気が通って以来、実際にランプを使っているのは、廊下や露天風呂など一部分になってしまったが、そこには昔の「ランプの宿」の手がかりも隠されている。豪華な露天風呂付き離れが完成した今、どちらかというとリゾート志向、高級志向にシフトしているようにも見えるが、それもよく考えてみると、この宿の「個性」になってしまっているから不思議だ。
このある意味「無国籍」的な宿の装いは、日本人ならではのバランス感覚に由来する。日本という島国は海外からの影響を数多く受け、そして独自の文化を作り上げてきた。
これからの温泉宿・ホテルはやはり「個性」の時代。「オリジナリティ」の時代。だからこそ好き嫌いがはっきりする宿がこれから生き残っていくような気がする。万人が支持するような宿なんて興味がない。ビジネスホテルならまだしも、誰もが、やはり自分の琴線に触れる、自分だけの宿を探したいはずだ。(J)
<あとがき>
「貸切温泉どっとこむ」では、「ランプの宿」を取り上げる際、とにかく他のメディアよりも多くの画像、多くの情報を入れてみました。そこでこの宿に宿泊してみようという方であれば、何かしらヒントらしきものが見つかれば幸いです。ただ、ご存知のように超がつくほどの人気宿。希望日に宿泊できないかもしれませんが、そこは頑張って電話をしてください(2008年4月現在、予約は電話のみ)。
最後に、この宿までクルマでアクセスしようとしているのであれば、是非その道中のドライブを楽しんでください。奥能登が、どれだけ自然が豊かで鄙びてて、いかにいいところかお分かりになるはず。そして宿に到着すれば、そのドライブは「ランプの宿」劇場のプレリュードだったことに気づくはずです。