黒川中心地から少し離れた、静かで、見晴らしの良い開放感と、ほどよいお篭り感が同居する佇まい。地産の新鮮な野菜を中心としたヘルシー志向の和洋創作料理、そして小さい宿ならではの、そして“黒川らしさ”とも言えるお宿スタッフとの親近感。こういった要素からもわかるように、幅広い層の女性客から大きな支持を得ているのが、「旅館 こうの湯」だ。
それだけに、やはり女性を意識したサービスの数々が展開されている。
客室には洗顔料や化粧水、コットンなど、女性が日常必要とするものが常備され、アメニティー類はお持ち帰りもできるようにと、可愛らしい巾着袋も用意されている。雨の日の来客には、ガーゼンハンカチや和布カードケースなどのミニグッズをプレゼント。
時期にもよるが、「めざせ温泉美人」と銘打ったプランには、夕食時の食前酒を自家製梅酒やギラスワイン、ソフトドリンクなどから選ぶことができ、浴衣が苦手という方にはコットンパジャマや作務衣のレンタル、美顔器「ナノケア」も用意されている。
そして、源泉をそのまま閉じ込めた「黒川すぱみすと」のプレゼントなどの特典が付く。まさに、女性にとって嬉しいことづくめである。
その着眼点はまさに等身大、若い女性そのものだ。
それもそのはず、この小さな宿を切り盛りするのは、昭和56年生まれの若女将、松崎祐子さん。
黒川温泉を代表する宿、「ふもと旅館」の経営者を両親にもち、子供の頃から旅館という空間に身を置いて育ったという、生粋の“旅館っ子”。
「温泉地に生まれるには、7回生まれ変わらないといけないんですよ」と笑顔で語る若女将は、心からこの仕事を楽しんでいるようである。
自身が旅行先で感じることを、ダイレクトに自らの宿に活かす。この機敏さと行動力はやはり、「入湯手形」を発案・実行し、街の発展に大きな貢献をした親譲りのものなのであろう。
その活動意欲はひとつの宿に留まらず、黒川温泉青年部においても発揮されている。
この部会、元々は黒川温泉の「お祭り班」としての存在だったが、より多くの人に黒川温泉のことを、そして黒川温泉だからこその取り組みを紹介したいとのことから発展したものである。
日頃の活動や出来事などを各部員が「黒川温泉わっかもんブログ」にて綴っているので、興味を覚えた方は是非ご覧頂きたい。
その活動の一例としては、温泉街のいたるところに設けられている巣箱が挙げられる。
これは、2008年の5月の愛鳥週間に催されたイベントで、地元の大学生や親子連れの観光客によって製作されたものだ。
田舎らしさが今に残る黒川温泉だが、だからこそ提示できるのが環境問題。
客室の窓からも眺められるこの豊かな自然だが、実際に触れてみて、体感することで、より親しみも強くなる。身近に自然を感じることこそが環境を考えるきっかけになり、そして巣箱で育つ雛の成長を見守ることで、より深く自然に関わる。
春から夏にかけての成長と巣立ち、実りの秋を満喫する成鳥、枝から葉が落ちて観察のしやすい冬と、まさに四季折々の楽しみ方が用意されている。
より親しみを感じてもらえるように、安心して黒川に来訪してもらえるように、という彼ら青年たちの想いが、温泉地として単に“癒し”を売るだけでない、新たなアプローチとなりうるアイデアを生み出した。その好例といえよう。
「旅館こうの湯」は、本館にあたる「ふもと旅館」より少し高級志向の宿。
温泉街の中心にある宿とは雰囲気が少し違うようだ。
それは、やはり全室に露天風呂が備えられている点から来るものだろうが、大事な人 と過ごすための空間が自然に用意されているのが、この宿最大の魅力。
そして、閑静な環境もこの宿のキャラクター作りに寄与している。
だからこそ、パートナーとの語らいの時間がいつもより心地良く感じられるに違いない。
記念日旅行などに、何度も利用したい宿の一つにご推薦する。(J/eb)