1191年の創業以来、15代に渡って受け継がれてきた日本の名宿、「陶泉 御所坊」。日本三名泉に数えられる有馬温泉の代名詞的存在であるこのお宿は、古い旅館を再生させた「ホテル花小宿」、レンタル型コンドミニアムの「旅湯 アブリーゴ」という姉妹宿も、同じ有馬温泉内に持つ。他にも系列店としてバーやレストラン、カフェ、ギャラリー、ミュージアム、土産物屋などを展開し、温泉街に点在するこれら施設は街全体の雰囲気づくりと活性化に一役買うなど、名実ともに有馬温泉の中心的存在である。元来、一軒の由緒正しき老舗宿であった「御所坊」だが、街全体に広がるこの動きは現当主、15代目の金井啓修氏のアイデアに端を発するものである。その彼自らの豊富なアイデアと培った経験を注ぎ込み、平成20年4月にオープンしたのが、4軒目の宿泊施設となる「有馬山叢 御所別墅(ありまさんそう ごしょべっしょ)」だ。
『別墅』とは、別荘という意味。中国語では別荘よりも格式の高いものを表す言葉で、命名は御所坊全体のイメージアドバイザーでもある美術作家、“無方庵”綿貫宏介氏。 “国際的視野に立った有馬の温泉宿”というイメージで宿づくりを進めた結果、有馬では初の、全室離れのヴィラ型式となった。それぞれが独立した全10棟からなる、より静かに、より豊かな休暇を過ごす人に向けたお宿。空間的な余裕、自然を間近に感じられる環境―これら海外リゾートによく見られる利点をただ輸入するのではなく、「日本の有馬」を感じさせる佇まいに変貌させたのである。
そもそもこのエリアは、日本の観光業界における記念碑的な地であったという。近代日本の黎明期、神戸港が開港した明治期に、多くの海外セレブリティが休暇のため足を踏み入れた地がここ有馬。特に「御所坊」のさらに奥、滝川の渓谷沿いには「杉本ホテル」や「増田ホテル」など、外国人専用のホテルが建ち並んでいたという。「御所別墅」の建つこの地にもかつて、京都清水寺の流れをくむ尼僧、清水清林が経営する「清水ホテル」があった。夫と共に10ヶ月をかけて世界一周し、『レイ夫人の世界周遊旅日記』を記したイギリス人、アリス・メアリー・レイ夫人も明治15年にここを訪れ、ランチを楽しんだという記録も残っている。つまり、ここは100年以上も前から、海外から訪れる人々に日本という国の良さを発露する場であったというわけである。その脈々と流れる伝統を受け継いだのが、有馬温泉の顔である「御所坊」であり、当主の金井氏であったというのは、必然と考えるべきであろう。
六甲山の深い緑も、ここ有馬の風物詩だ。高い木立の中、黒塀に囲まれたひっそりとした印象の門をくぐり、正面に聳える樹齢数百年という杉の巨樹をシンボルにした館内に入る。客室は前述の通り全て離れだが、その他の施設もそれぞれ別個の建物からなる。
まずフロントのあるロビー棟、ここは館内で最も大きな建物で、100人は収容できるという広さのロビーと、カウンター式のダイニングバーがある。このロビーの利用は宿泊者に限定しておらず、一般の方でもランチなどでの利用が可能だ。さらに、結婚式などのパーティ会場としても開放するというホテルのようなスタイルも持つのである。
続いて、隣にあるのが食事棟。個室に分けられたダイニングルームが並ぶ、よりプライベートに食事を楽しみたい方に向けた会食場である。各個室の窓から正面に、目の前に広がる山の緑を楽しむことができる。これら二つの建物は崖の上に建てられており、建物の外、崖側には心地よい風の吹くウッドテラスが続けて設けられている。天気のよい日などにはここで朝食やランチをいただくこともできるというものだ。
取材は4月下旬、新緑に輝く山は色鮮やかで、新しいこのお宿のフレッシュさを象徴するかのようであった。6月頃には渓流でホタルが見られ、また秋には紅葉も楽しめる。冬には雪で薄化粧する静かな風情も楽しめるという、まさに自然を感じられる環境にある。
もうひとつ、男女別の大浴場とエステルームのある温泉棟が入口から見て左手にある。この湯殿は、江戸時代に有馬にあった共同湯・元湯「一の湯」・「二の湯」をモダンに復元したもので、15:00〜0:00、6:00〜11:30の時間帯で利用が可能だ。太い梁が組まれた浴室はシンプルな構成で、黒い御影石が鈍い光沢を放つ。有馬温泉名物の金泉が張られた湯舟は、大人10名が入れるほどの大きさを持つ。有馬の新しい施設ながら、古式ゆかしい伝統はここでも引き継がれているのである。洗い場スペースも広く取られており、海水の二倍の塩分を持つという金泉を、湯上り後にしっかりと洗い流してから出ることができる。個別ブース内にある全身シャワーも好評だ。
エステルームは2室設けられており、湯上り後などに身体の芯からリフレッシュをすることができる。施術は、やはり「御所坊」の関連施設、温泉街にあるアロマテラピー、「B&I」のスタッフによる。
宿泊においてもっとも長い時間を過ごすであろう客室は全10棟。すべて離れ形式で、大きく分けると平屋タイプが5棟、メゾネットタイプが5棟に分類できる。すべてのヴィラは、長期滞在でもゆっくりと寛げるようにとの配慮から、テラス部分を除き100uの広さが確保されている。ヴィラのため四方に窓が設けられており、そのため室内には豊富な陽射しが差込む。人間の体温とほぼ同じ室温のサーマルルームも全室に備わっている。
ちなみにこれは、アジア圏を中心に展開する高級リゾートホテルチェーン、アマンリゾートのスタンダード客室と同じほぼ広さとなっている。
平屋タイプの5棟のうち、池の端、築山部分に設けられた客室は「T」〜「V」の3棟。入口は石段を登った箇所にあるが、室内はフラット。リビングルームとベッドルームが連続する、細長い間取りとなっている。高い天井の中、落とされた暖色の照明が静かな雰囲気をかきたてる。リビングルームにはカウンターバー(客室U、Vのみ)や、オーダーメイドのテーブル、応接セットにPCデスクが置かれる。
池に面してあるのが「W」と「X」の2棟。部屋配置は異なるものの、リビング、ベッドルーム、洗面、サーマルルーム、バス・トイレという間取り、高い天井の開放感ある空間は「T」〜「V」と同様。「X」はお宿の入口から、段差がほとんどなく到達することができるバリアフリー型のヴィラで、トイレに手すりが設けられているなど、より多様な宿泊客への対応が見られる一室だ。
敷地内の石段を滝川に向けて下ると、メゾネット型ヴィラ「Y」〜「]」の5棟が並ぶ。斜面に建つため玄関は2階。リビングルームには畳の掘りごたつコーナーも設けられ、和洋折衷間となっている。木の螺旋階段を降りた1階にベッドルームとサーマルルーム・バスルームという構成だ。一室最大で4人までの宿泊が可能となっており、こちらのメゾネットタイプは家族連れなどにより向いているといえよう。窓の外にはすぐ滝川が流れ、より近くに自然を感じられる。
客室設備は日本製、世界に誇れる“Japanese Products”を厳選している。電話や空気清浄機、DVDプレイヤーなどは東京生まれのデザイン家電メーカー「amadana」のもので統一。TVはHITACHI製、37インチの液晶がリビングとベッドルームに一台ずつ置かれる。浴室に置かれるシャンプー・コンディショナーは資生堂の「TSUBAKI」だ。
長い時間を過ごすベッドのマットレスやシーツなどのリネン類にも、日本製の最高品質のものを使用。枕も硬いものと柔らかいもの2種類を用意。調度品や設えだけでなく、肌に触れるものから上質にこだわり、徹底をしている。さらに、麻100%のリラックスウェアー、バスローブ、湯上り足袋も高品質の糸を使ったオリジナルのもの。御所坊グループでは地球環境に配慮をし、できるだけリサイクルできるものやダイオキシンを発生させない材質のものを吟味し、人と地球にやさしい品を使用しているという。
テーブルなどの家具類もオリジナル品。綿貫先生がデザインを監修したもので、岡山出身の家具デザイナー、迎山直樹氏によって作られた。タモ材のテーブルは温泉の土を混ぜた染料を施したところ、独特のグレー色に仕上がったという。このテーブルの足は鍛鉄でできており、この鍛鉄と、玄関ドアのステンドグラスや客室のランプは、綿貫先生の知人でもある高橋正治氏のデザイン。
リゾートとしての雰囲気と風格を持ちながら、有馬という地は神戸市内。利便性も忘れられていない。全室に完備されているデスクトップPCは光ケーブル接続されており、交通機関の時刻表や、神戸市内のグルメ情報、周辺観光地情報などを検索するのに便利だ。また、プリンターも格納されており、欲しい情報をプリントアウトして携帯することも出来るようになっている。
食事とその場所を選ぶことができる自由度の高さも、このお宿の特徴だ。基本的に泊食分離のシステムを導入しているため、まず館内でのフレンチ、「御所坊」にある食事処「餐房 閑」でいただく山家料理、そして有馬の街のレストランという3択が用意されている。館外の施設で食事をいただく場合は、宿名物のロンドンタクシーによる送迎がつく。
オープンな環境でお酒をいただくなどして食事を楽しみたいなら、ロビー棟にあるダイニングバーがいい。ここにはソムリエも常駐しており、取り揃えられたブルゴーニュ産や勝沼産などの厳選のワインや日本酒をその日の食事にあわせてセレクトしてくれる。カウンター正面に取られた窓からは、ライトアップされた緑が深い陰影を刻む様子が見られる。
よりプライバシー感を求めるなら、隣接するダイニング棟の個室を希望するといい。ここは人数に応じて部屋の大きさも調節できるので、大小各種パーティや祝い事の席などにも活用できる。
また現在、客室での提供も計画しているという。
旅館の典型にとらわれない姿勢は、有馬の街と一体化した「御所坊」のらしさが現れたものといえるだろう。それは、食事そのものにも表れている。オープン間もない取材時(2008年4月)にメインダイニングでいただいたのは、フレンチをベースに独自のアレンジを施した“山家南蛮料理”。これは、明石浦・浜坂漁港の天然魚介類と有馬近郊の道場町・淡路島の野菜が主役の魚菜コースだ。
兵庫県香美町に持つ自家農園で収穫された野菜を用い、また鮮魚や肉、果物に関しても、可能なかぎり地産地消にこだわる。脂分を極力抑え、純正のフレンチにはないあっさり感があるが、地元・有馬出身の津田義浩シェフの熟練の技術をして、濃厚で深みある味わいに仕上がっている。彼はこれまで、神戸ポートピアホテル、神戸ベイシェラトンホテルやウェスティンホテル淡路などの一流ホテルのレストランで、オープニングから携わってきた経験があり、このオーベルジュ的な要素も持つ、新しい宿をプロデュースする一人なのである。
マクロビオティックを参考に、季節の旬の素材、なるべく植物性タンパク質の素材を利用するなど、これからの“食”の主流になるであろう健康に配慮したコースメニューは、取材時の場合以下の通り。温泉街にある“ガレーリア・レティーロ・デ・オーロ”でチョイスした、素朴さと洗練が同居する食器と絶妙の相性を見せる。
山叢晩餐のはじまりとして長皿に並ぶのは、有馬滝川虹鱒の自家製フュメ(燻製)、その卵と道場で農園を営む樋口さんが栽培したフヌイユの実と葉が添えられる。レンゲに載せられた赤蛤と竹の子のマリネには木の芽が添えられており、一口にその香りと味を楽しめる。黒米と芽キャベツのブロシェット(串揚げ)、これは淡路産の古代米(黒米)を白米とブレンドし香ばしさを加えたもので、もろ味噌の味わいによく馴染んでいる。もうひとつは白和えのような、三田“日向牧場”のリコッタチーズとセリ菜。リコッタチーズとは、汲み上げ豆腐のように、凝固しかけのチーズをすくったもので、乳糖が多く、脂肪分が少ない。そのためほんのり甘くさっぱりとしていて、裏ごしした豆腐のような食感がある。このように和え物として登場するのは津田シェフならではのアイデアだ。
ガラス盆に載せられて登場するのはパルフェ(パフェ)。明石海峡の渡り蟹とそのブイヨンジュレ(ゼリー)と、蕪やブロッコリーなどお気に入りの小野菜がグラスに入れられる。添えられたスプーンのバルサミコを入れ、かき混ぜていただくという趣向のもの。新鮮な野菜の青臭さと歯触り、渡り蟹の磯の香りとコク、バルサミコやジュレの酸味と香ばしさが口の中でパッと広がる。
野菜が主役の品が続く。繊細な色合いを見せる涼しげなガラスボウルには、旬の冷製・特濃トマトのヴァミッセリを中心に、プティポア(小絹さや)など豆野菜、アンモナイト状にゲソが巻かれた明石海峡のハリイカが入れられ、紫と緑のからし菜が載せられた目にも鮮やかな一品。トマトの深い味わいと酸味に、さらに深みを感じさせる味わい。
明石浦のお魚料理として、岩屋で獲れた油目(アイナメ)のポワレ。抜きの大根と淡路産の太いアスペルジュ(アスパラガス)、ハンガリアンパプリカのソース、フランスキャベツのエッセンスと空心菜の葉・ケールの花が添えられる。オリーブ油の香ばしさと、各ソースの素材の味が引き立っている。大根はこの季節に採れる大きさ、まだ小さいものをそのまま使用。自然と一体感のあるメニューであることがわかるだろう。
肉料理はこの日、特選但馬牛。低温調理された、鞍下肉のフィレビーフのポアレに、黒キャベツ、紫人参のロティ、アラジンカボチャのラグーが色鮮やかに添えられる。もろみと醤油、一味唐辛子を混ぜた特製ひしおがらしが、西洋マスタードのように添えられており、独特の甘味があるカブの仲間、ビーツのジュ(ソース)の控えめな味とよく馴染む。和風の味付けと洋風の盛り付け、双方の利点を融合させた一品である。コースによっては三田牛なども出され、もちろん独特の味わいに仕立て上げられる。
ここで出されている“Besshoパン”は焼きたて。プティ・リュスティックは脂分を省いたもので、食物繊維や鉄分、ビタミンB1の含有量も高い全粒粉のパンとともに、毎日ここの厨房で焼かれているものだ。動物性たんぱく質をふくむバターなどは用いず、消化に優しいエクストラヴァージンオイルや淡路の藻塩をつけていただく。
ここ有馬温泉はスイーツのメッカ、神戸市内にある。それだけにデザートのレベルも非常に高い水準で提供される。デザートには二郎(にろう)いちご、“章姫”のシブーストにいちごのクーリー、そして炒り番茶のアイスクリームにはクリスタル状のカラメルが載せられる。番茶には苦味がないため、濃厚な味わいのものがつくれるそうだ。
食後にはコーヒーや紅茶に添えて、ミニヤルディーズが出される。最中タルトレットと新生姜のコンフィ、プラリネ・ターブルショコラ、コーヒー生チョコ、赤卵の殻に入ったジャスミンティーのプディングというラインナップだ。コーヒーはサントス・アラビカ種。芯まで焙煎されている炭焼きのもので、豆をそのまま食べても美味しいほど。紅茶は香りにインパクトがあるスリランカ(セイロン)のdilmar社のアールグレイを使用したオレンジティーが用意されている。
朝食も同様に、個室、バー、テラスなど自分の好きな場所でいただくことができる。“パン・ド・ボゥ”の焼きたてパン数種と、ブロッコリーのスープ、フロマージュのフルーツ載せ、オレンジジュース、コーヒーor紅茶に加え、国産ハムに添えられる卵料理が出された。オムレツ、スクランブルドエッグ、目玉焼き、ポーチドエッグから選んでいただくことができる。
館内でとる朝食も、ゆくゆくはルームサービスもできるような対応を考えているという。よりのんびりとした滞在を好む方にはありがたいサービスである。
朝食前などに、朝の賑わいを見せる温泉街へ繰り出すのもいいだろう。都会の喧騒などとはかけ離れたひっそりとした佇まいのこのお宿だが、有馬の温泉街まで徒歩で坂道を下って5分程度。狭い路地や坂道が縦横無尽にひろがる迷路のようなこの温泉街には、お土産屋やレストランなどに混じり、文房具屋や生鮮食品店などもある。また、御所坊グループのギャラリーやカフェも点在するので、物見遊山としてはまたとない環境にある。
連泊などで旅館の贅を凝らした食事に飽きたら、温泉街にあるレストラン、有馬食堂「花居森(はなごもり)」や、太閤橋のたもとにあるラーメン屋「青龍居」などでの食事もいいだろう。ランチには昭和の懐かしい雰囲気を持つ「茶房 チックタク」や、御所坊の先々代の主人の家をリニューアルした「カフェ・ド・坊」での軽食もいいかもしれない。千差万別の客の好みと滞在スタイル。バラエティに富む選択肢の中から取捨選択し、自身の好みをチョイスできるという自由度の高さも、やはり御所坊グループに宿泊するからこその特典、付加価値なのである。
上述のように、明治初期から海外要人に向けたリゾート地として開発され、その後関西系財閥が永い間所有し、数年前に手放す。そこで、金井氏の知人約20名が集まりファンドを結成、まわりから持ち上げられるようにしてはじめたのが、この新しい宿立ち上げプロジェクトなのである。始まりは、2006年夏のこと。由緒正しいこの地を生かすべく、彼の責任感や使命感をもってこの事業に向かった。
意外といえば意外なのが、これまで老舗宿を受け継ぎ、古い旅館を再生させるなどしてその手腕を発揮してきたオーナー金井氏だが、ゼロの状態、いわゆる新築から手がけたお宿はこれまでなかったということ。それだけに、「御所別墅」には彼の想いが凝縮しているということができるだろう。“らしさ”を感じさせるのは、大型の宿泊施設ではなく、点在する離れの形式にしたことだろう。有馬温泉を見渡せば数多くの高層温泉ホテルが建ち並んでいるように、同じような大きなものを建てて収益を考えるのが普通なのかもしれないが、温泉業界の粋人、金井氏は違った。
とにかく全室スイート仕様、離れ形式、メインダイニングにはフレンチ、極上のエステ、季節には蛍の舞う自然たっぷりの閑静な環境・・・と、贅沢なキーワードがこの「御所別墅」に組み込まれている。前述のように、泊食分離を推進し、自分の宿だけでなく、有馬の温泉街全体の活性化に情熱を注ぐ彼だからこそできた、結晶のような宿でもある。できれば、最低でも2泊はしたい。連泊してこそ、この落ち着いた空間が肌にしみてくる。別荘代わりに使って欲しいとの意図から、「御所別墅」という名を付けたわけだから。
もうひとつ金井氏らしいところは、「露天風呂付き客室」を造らなかったところ。この価格帯の宿泊施設で離れ形式であれば、普通なら、分かりやすく客室に露天風呂を造る傾向にある。さらに言えば、源泉も豊富に所有しているので、造れないはずはない。アンチ客室露天風呂でもあるまいが、これも彼の真骨頂かもしれない。全室に客室露天風呂の代わりに、「サーマルルーム」という提案は、彼ならではの、または彼にしかできない発想なのだ。
この新しい金井ワールドを是非、体感していただきたい。有馬初とも言えるラグジュアリーな宿は、全国的にみても、多くの個性が内包された宿泊施設だということは断言できる。
(J/eb)