鬼怒川温泉は、箱根と並び関東を代表する東京の奥座敷として知られる温泉街だ。
開湯は江戸時代(1752年)。鬼怒川の西岸で温泉が発見され、当時は滝温泉という名で呼ばれていたという。日光の寺社領であったことから、日光詣で帰りの諸大名や僧侶達のみが利用可能な温泉だった。
明治に入って滝温泉が一般にも開放されるとともに、明治2年には東岸でも藤原温泉が発見された。その後、上流に水力発電所が建設されたことにより鬼怒川の水位が下がり、川底から新温泉が次々と発見されることとなる。それにより次第に温泉街として発展していったのだ。
鬼怒川温泉がその名で呼ばれるようになったのは、昭和2年(1927年)のことだ。戦時に運行が休止されていた東武鉄道の特急「きぬ」が、戦後に運行を再開したことで、東京からの観光客が押し寄せ、大型温泉街、また歓楽温泉街として急速な発展を見せたのだ。
街の中心部を鬼怒川が悠々と流れ、龍王峡や大瀞などすばらしい自然の風景がそのまま残されている鬼怒川温泉。ここまでの足である東武鬼怒川線はこれまで浅草駅を始発としていたが、2006年3月から特急の運行により、東京の中心であるJR新宿駅やJR池袋駅から直通でアクセス可能となった。
鬼怒川温泉駅近くから約2キロほどの鬼怒川渓谷沿いの両側には、数多くの大型ホテルや旅館が連なり、温泉情緒が漂っている。そんな温泉街の中心に位置するのが「鬼怒川プラザホテル」である。
こちらの宿の特徴は、立地にある。鬼怒川の中洲にせり出すような格好で建つ鉄筋12階建ての大きな建物で、眼下には渓谷が広がり雄大な光景を一望できる立地を誇っているのだ。
玄関を入ると最初に目に入るのが、広々としたエントランスロビーだ。天井は吹き抜けになっていて、渓谷沿いに面した窓は全面にステンドグラスが嵌め込まれたユニークな意匠が施されている。
ロビーにはゆったりした間隔でソファが配置されているので、鬼怒川の渓流を眺めながら、しばし道中の疲れを癒すのにもってこいな空間となっている。また、インターネットを自由に利用できる「フリーインターネットスペース」もあるので、周辺観光スポットや地元のおいしいもの屋さん探しなど、情報収集に重宝するサービスがあるのも嬉しい。
「鬼怒川プラザホテル」の客室は全160室、客室タイプは8種類に分かれる。デザインをはじめ、タイプごとに廊下のインテリアまで全く異なるので、それぞれに違った雰囲気と魅力が味わえるようになっている、ユニークな造りだ。
最上クラスの客室は、全館3室のみとなる「山水亭」だ。掛け流しの客室露天風呂が付いたこちらの客室は、オーディオやリクライニングチェアーが備わっている、いつでも好きなときに湯浴みを堪能できる露天風呂に浸かり、火照った身体をリクライニングチェアーに横たえながら持参したお気に入りCDを聴きながら癒しの時間を楽しむ。まさに温泉好き、大人のカップルにお勧めの客室となっている。
全9室のみとなっている「雅亭」も露天風呂付き客室となっている。渓流側の部屋には檜の湯舟が設置され、山側には陶器の湯舟が設置されている。部屋の造りは和室タイプと洋室タイプになっていて、各部屋にはマッサージチェアーが備わっている。
「オリエンタルスウィート」は1室のみの客室となる。10帖のリビングに8帖の寝室という間取りで、東洋のサロンを彷彿とさせる空間が演出されている。お風呂は露天ではないが、女性に人気の猫足のバスタブとなっており、数種類のバスアロマが備わっていて好きな香りで湯浴みが楽しめるようになっている。
全5室の「コンフォートルーム憩(いこい)」は、カップルや女性同士の旅にオススメしたい。リニューアルされたばかりの客室はフローリングや琉球畳などを使用しており、心地よい和の空間が体感できる。また、こちらの客室はDVDプレイヤーが設置されているのでお気に入りの映画を持参するのをお忘れなく。
その他の客室にはコンセプトルームとして「和ジアンルーム」(全10室)「シノ和ルーム」(全11室)「SUKIYAルーム」(全11室)がある。各部屋はそのネーミングが示すような雰囲気が楽しめる客室だ。
「SUKIYAルーム」は日本の伝統文化である数寄屋造りに、現代風のモダンな意匠を取り入れた客室。
「和ジアンルーム」は和の落ち着きとアジアンリゾートの雰囲気を融合させた部屋となっている。
「シノ和ルーム」は18世紀中期のフランスで貴族を中心に広まった中国ブームの「シノワズリ」の概念を装飾に取り込んだ客室だ。
もっともリーズナブルな一般客室が「スタンダードルーム」(全110室)になる。こちらは部屋食可能な客室も用意されている。
こちらのホテルでは、フロントにて昔懐かしい玩具やボードゲームなどのレンタルサービスがある。 ジェンガやオセロ、野球ゲームや人生ゲームなど種類も豊富にあるのでお子様連れのファミリーはもちろん、ご夫婦やカップルも童心に返り部屋でそれらを楽しむなんていう過ごし方もありなのでは。
「鬼怒川プラザホテル」は、3つの食事スタイルをチョイスすることができる。暖簾で仕切られた個室風の食事処「都味喜(つみき)」でいただく会席料理と、無縁ロースターで網焼きを楽しめる個室風の食事処「華厳(けごん)」でいただく焼き物料理、そしてゆったり部屋でいただくことのできる部屋食だ。この他に大グループ用の食事処「男鹿(おじか)」もあり、食事の内容はそれぞれ違ったものを提供してくれるのだ。
今回の取材(2008年5月)でいただいた料理は、食事処「都味喜」でいただくことのできるメニューである。以下に紹介する。
先付は若布ダシでタケノコを炊いてゼリーで寄せた若竹寄せ。タケノコは地元の山で採れた鮮度抜群の素材で、独特のコクと歯応えが楽しめる一品。
前菜は旨ダシで炊いてエゴマ味噌を添えた巻き湯葉、素焼きした鮎を有馬山椒と醤油とザラメで煮た鮎の有馬煮、小エビを蒸し煮したつの字海老、米とモチ米を合わせた高菜の細工寿司、吸い地に漬け込んだもって菊、桜の葉とグリンピースをすり身と生クリームで蒸した香り身上の7品が盛られた一皿。
造りは鮪と甘海老とタケノコの刺身。鮮度の高いものしか刺身でいただくことのできないタケノコは、旬ならではの贅沢さだ。
煮物は里芋とジャガイモと姫皮で作ったタケノコ饅頭に豆乳と旨みダシで作った餡をかけて。
焼物は鰆(さわら)と山菜の奉書焼き。酒とミリン、薄口醤油に漬け込んだ鰆に、山菜と甘み味噌で包み焼きにした一品。
蓋物はワラビ、カニ、鮭、ダイコン、シメジ、湯葉素麺、長ネギ、水菜、エノキの山海鍋。最初は鶏ガラスープに練りゴマの鍋汁でいただき、途中で豆乳を入れることにより、1つの鍋で2つの味を楽しめるようになっている。
陶板は自家製のネギ味噌ダレでいただく前日光牛のステーキ。タマネギ、ゴボウ、丸茄子、タケノコ、ブロッコリー、マイタケ、カボチャと、豊富な野菜やキノコも嬉しい。
酢の物は春キャベツとニンジンをテリーヌ風に仕上げ、牛乳と自家製マヨネーズで餡風にしたソースを合わせたきゃべつ博多蒸し。
食事は白米とお麩とワカメの赤だしに自家製の香の物が付く。米は栃木のコシヒカリを使用している。
デザートは、栃木の特産イチゴのとちおとめに抹茶クリームを添えて。大粒で甘みたっぷりのイチゴは、食事の締めにぴったりの爽やかな味わいだ。
食事処「都味喜」にはドリンクバーが設置されている。お茶、コーラ、オレンジジュース、スポーツ飲料、カルピスから選べて、自由に利用できる。
「鬼怒川プラザホテル」では、朝食を和食・洋食の選択ができるようになっている。和食は食事処でいただく和定食、洋食はラウンジ「ら・こんて」でのバイキング形式となっている。
和食のメニューは高野吹き寄せ、インゲンとニンジンとダイコンの信田巻き、山独活鰊、厚焼き玉子、焼き海苔、時の焼魚、湯葉五穀米雑炊、白米と味噌汁に香の物、デザートは豆乳ヨーデルのフルーツカクテルが並んだ。
洋食は鶏のクリーム煮、スクランブルエッグ、スパゲティ、ソーセージ、ハム、ベーコン、生サラダ、ポテトサラダ、コーンポタージュ、フルーツゼリー、オレンジジュース、トマトジュース、コーヒー、紅茶、ヤクルトが並ぶバイキング形式。パンは毎朝朝食会場で焼く。パンの種類はほうれん草パン、クロワッサン、チョコ入りクロワッサン、白パン、胡麻パン、バターロールになる。
貸切風呂が充実している当ホテルだが、館内にある男女別大浴場も魅力ある造りになっている。
大きな内湯の上に橋が渡してあるユニークな造りの男性用大浴場は、鬼怒川の渓流を間近で望める露天風呂も備わっている。加水による温度調節を行っているが、源泉掛け流しの贅沢な湯を堪能することができる。
女性用大浴場も基本的には同じ造りになっているが、露天風呂が2つ備わっている。1つの湯舟はジャグジーになっていて、より高いリラックス効果が得られるようになっているのだ。
また、両大浴場にはサウナも備わっている。利用時間も滞在中開放されているので、何度でも湯浴みを楽しむことができるので、嬉しい限りだ。
お風呂を楽しんだ後は、館内のパブリックで遊戯を楽しむこともできる。7階にはビリヤードと卓球台が置いてある「遊戯場」があり、フロントに申し入れれば気軽に利用できる。
また、ちょっとお酒を楽しみたいなんていう方にも、対応できるようになっているのが、「鬼怒川プラザホテル」の至れり尽くせりなおもてなしだ。1階ロビー横にはクラブ「シャラントン」があり、グループはもちろん、一人でも気軽に楽しめるスペースとなっている。こちらはお酒だけでなく、軽い食事やカラオケも楽しむことができるので、お酒好きの方、またはカラオケを楽しみたい方は、ぜひ利用してみてはいかがだろう。
旅の締めくくりに欠かせないのは、お土産選びだ。こちらのホテルのお土産処は、定番のお菓子や食料品だけでなく、地元の特産品や民芸品、またホテルオリジナルの商品など、豊富な品が揃っている。鬼怒川温泉のお土産の定番「あけび」「日光甚五郎煎餅」やオリジナル商品「フレーバドティ」などは、やはり人気の商品のようだ。
お土産コーナーはけっこう広いので、時間に余裕を持って立ち寄ることをおすすめする。
鬼怒川周辺も、見所満載だ。ホテルから近い距離には可愛らしい猿のショーが楽しめる「日光猿軍団」や、世界各国の遺跡や建築物が25分の1サイズのミニチュアで楽しめる「東武ワールドスクウェア」などがある。またホテルから徒歩5分ほどの距離にある「ふれあい橋」では、夏季限定で橋上ビアガーデンが営業される。鬼怒川の渓流を眺めながら味わうビールは、格別なものがある。
少し離れるが日光東照宮、中禅寺湖などへのアクセスもいいので、じっくり観光巡りを楽しむなんてこともできるのだ。
鬼怒川の渓流を一望する「鬼怒川プラザホテル」は、いわゆる大型ホテルの部類に入る。しかし、団体客向けの型にはまったホテルが多い中、女性客や個人客をメインターゲットにし、訪れる宿泊客の様々なニーズに応えるべく、細やかなサービスと施設の充実振りを計っている珍しいホテルなのだ。
事実、鬼怒川温泉の中でも、それぞれコンセプトの異なる8タイプもの客室を持っているホテルは他にない。また、離れの湯「あけび」が宿泊プランに組み込まれているのも「鬼怒川プラザホテル」だけだ。
このホテルがカップルや女性客を中心に若い世代に支持され高い稼働率を誇っているのは、周りの観光スポットや、東京からのアクセスの良さ以上に、こうした選択肢の広さによるところが大きいのだろう。
公式HPを見ていただければ、多彩な宿泊プランが用意されているのが分かるように、常に宿泊客の選択肢を広げることに力を入れているのだ。
離れの湯「あけび」60分付きプランは、その中でも一番人気の高い宿泊プランだという。利用するのはやはり若いカップルが多いそうだ。
エグゼクティブには、館内に1室のみの「オリエンタルスウィート」でラグジュアリーな雰囲気に浸りながらの滞在がおすすめだ。
中高年の客層には、鬼怒川随一と評判の良い眺めの渓流側の部屋で宿泊及び季節の会席料理を部屋食で味わえるプランが人気で、夏にはプールも楽しめるファミリー向けプランも用意されている。
現代的な部屋タイプや多様な温浴施設、選べる料理プラン。旅のスタイルも多様化した昨今、“選択”ができるということは、利用する宿泊客にとって贅沢なことではないだろうか。
リゾートホテルと温泉旅館の長所をうまく融合した快適な雰囲気が、このホテルの一番の魅力なのではないだろうか。「鬼怒川プラザホテル」は、自分好みの最適な旅行プランが見つけられるホテルなのだ。(J/Hr)