北海道・道東エリアに「阿寒湖温泉」がある。温泉地のその名前どおり、阿寒湖周辺に旅館ホテルが点在している。開湯は、安政5年(1858年)、“北海道”の名付け親と言われている松浦武四郎がこの地を踏んだ時、すでにアイヌの人々が温泉を利用していたという。それから数十年の年月が経ち、やっと明治45年になってはじめて温泉宿が開業された。
しかし「阿寒湖温泉」が本格的に世に知られるようになったのは、昭和9年(1934年)に阿寒湖周辺全域が国立公園に指定されてから。
そして特別天然記念物マリモが湖底に眠っていることでも有名な阿寒湖は、他に紅鮭の湖沼陸封型であるヒメマスも生息する。冬は全面結氷し、ワカサギ釣りなども行われる。
周辺の森はエゾマツ、トドマツの木々が生い茂り、雄阿寒岳(標高1370m)が湖畔から眺められる。
阿寒湖温泉は道東の観光地の中心とも言えるだろう。
「あかん遊久(ゆく)の里 鶴雅」は、その阿寒湖温泉のリーダー的な存在だ。
この宿はご存知の方も多いだろうが、JTBが毎年、宿泊客からのアンケートをもとに、全国の旅館ホテルの評価を決めている中で、2001年度にはそのサービス最優秀ホテル、つまり日本一の評価を受けた。
その宿の概要をこれから紹介しよう。
ロビーは広々としているが、客室数233室の施設と思えば、驚くほどの大きさは感じられない。しかし、その一角に様々な仕掛けやサービスが用意されていた。
山ぶどうジュースやじゃがバターの無料サービスなどもそうだが、ロビー近くの女子トイレは「鶴雅」の満足度の高さを示すものがあった。
その「くつろぎのトイレ」と呼ばれる女性用トイレは、中に入るとギャラリー、奥にパウダールームがある。ここはゲストルームかと見間違うほどのゴージャスさ。お客様をいかに喜ばせようかというポリシーを感じさせる施設であった。
そのロビー奥に進むと「花見小路」と呼ばれる、おみやげ処、ショップなどが建ち並ぶメインストリートがある。この導線は、客室や大浴場に行くまでに必ず通る道でもあり、そこが外の温泉街の通りともイメージさせるスポットとなっている。
おみやげ処「百花苑」は、オリジナルのものから北海道のお土産がほとんど揃う大型売店。
「福福亭」は、つくりたてのお饅頭やおせんべい、十勝・岡女堂本家の豆菓子や甘納豆などが揃ったおみやげ店。
小物と雑貨「夢うさぎ」は、見るだけでも楽しい小物や雑貨が揃うショップ。手作りアイスなどの販売も行っている。
木房「アルブル」には、北海道の木を使用して作った木彫りの作品が並ぶ。職人の作業風景も楽しめる。この宿のルームキーのキーホルダーはこのお店の作品。
一番奥にあるラウンジ「花ふる里」では、昼は喫茶、夜はお酒もいただける。毎夜、ピアノや弦楽器の生演奏を聴くこともできる。ラウンジ内にはPCコーナーも置かれていた。他にお酒をいただくところとしてはB1階にナイトクラブ「ふくろうの城」や2Fにスナック「月あかり」もある。
メインストリート「花見小路」の突き当たりの扉を開けると、そこから阿寒湖のほとりに出ることができる。
この中庭ともいえる湖のほとりは、風もそよぎ心地いい。
野口雨情の石碑もあり、その先には雄阿寒岳がそびえていた。
このスペースを利用して、毎朝6:30から本場中国の講師による太極拳教室が開かれる。参加料は無料。北海道の大自然の中での太極拳はまさに旅の思い出として刻まれるだろう。
大浴場は、最上階8Fに展望大浴場「天河」、1Fに和風大浴場「豊雅殿」の2つに分かれており、時間帯によって男女別に入れ替わる。
最上階の「天河」は、ガラス越しに阿寒湖を見渡せる内風呂大浴場の「展望風呂」、そして「寝湯」。うたせ湯の「白糸の湯」は一筋の滝のように落ちてくるお湯が、肩・背・腰を刺激し、全身の疲れをほぐしてくれる。
「歩行湯」は、お湯と水に分けられた浴槽を交互に歩く。すると、床に敷き詰められた小石が足の裏のツボを刺激し、冷え性、疲労回復に効果がある。
泡のひとつひとつが全身にマッサージ効果を与え、血行の促進にも役立つ「ジャグジー風呂」もあった。
サウナもバラエティに富んでいる。まず、「展望サウナ」は、その名の通り窓から阿寒湖の眺望が開け、閉塞感がない。ここは高温のサウナだが、苦手だと思う方は「スチームサウナ」がオススメだ。霧のような蒸気が皮膚の隅々に入り込み、つやのある肌を作る効果がある。また、「クールルーム」も用意され、これはサウナで温まった皮膚を冷気で引き締め、新陳代謝を促す。
さらに、岩盤浴スペースも用意されていた。こちらは有料となるが、岩盤浴も高温・高湿タイプと低温・低湿タイプの2種類の部屋があって、専用の岩盤浴衣とバスタオル、そしてドリンク付きで一人1000円(部屋付き)となる。
ボディピーリングのコーナーもあった。こちらも(脱衣所やお風呂の外ではなく)洗い場内にある有料スペース。ボディピーリングとは、いわゆる“あかすり”で、全身ボディシャンプーを入れて30分4,200円〜となる。オイルマッサージ30分4,800円〜というコースもある。いずれにしても洗い場から直結しているので裸のままであかすりを受けられるので便利といえる。ちなみにスタッフはほとんどが若い女性スタッフとなる。
こんなところも「鶴雅」のお風呂部門で人気の高い要因のひとつになっているかもしれない。
その8Fの内風呂フロアの階段を上って屋上に出るとそこには、人気の空中露天風呂「天女の湯」がある。阿寒湖と雄阿寒岳の大パノラマが堪能でき、四季により移り変わる景色はまさに絶景。その他、源泉かけ流しの露天風呂や陶器風呂も備える。
1Fの和風大浴場「豊雅殿」にも同じく多種類の湯舟が揃っている。
庭園露天風呂「鹿泉の湯」は、阿寒湖の湖面に近い野趣あふれる露天風呂。夜はライトアップされ、幻想的な雰囲気に。
その近くにある「丸太風呂」は、樹齢650年と言われる北アメリカ産の“スプルース”の丸太を湯舟にしたもの。直径も2330mmもある。
御影石の湯舟の「和風ジャグジー風呂」もあった。
その他、「あわの湯」、檜風呂「かおり湯」、洞窟風呂「かくれ湯」、「歩行湯」、「サウナ」とこちらも充分にお風呂が設置されていた。
洗い場内には「阿寒百年水」の飲料水コーナーがあった。この水は、雌阿寒岳の山麓の原始林に降り積もった雨雪が70〜100年の歳月をかけ、湧き出た名水なのである。
また、8F「天河」同様、有料のボディピーリング・あかすりコーナーが洗い場内にあった。
上記大浴場の泉質は「ナトリウム−炭酸水素塩泉」。保湿成分を多く含むメタ珪酸を多く含んでいるのが特徴だ。源泉温度61℃の温泉は、慢性皮膚病、きりきず、やけどに効能が見られる。
客室は大きく分けると、「別館」、「新別館」、「レラの館」、「本館」の4つに分類できる。
まず、料金の一番高い「別館」からご紹介しよう。
「別館」客室は阿寒湖に面しており、眺望には申し分ない。
例えば、特別室(和洋室)590号室「瑠璃」は、この宿の中でも「貴賓室」「新貴賓室」に次いで豪華な特別室。25インチTV、ミニキッチン、フリーの冷蔵庫も装備。もちろん、窓から阿寒湖と雄阿寒岳が望め、間取りは、洋室+和室(12.5帖)+板の間+ツインベッドルーム+洗面所+檜風呂(温泉ではない)+トイレ。
展望特別室(和室)585号室もいい。こちらは、角部屋の特別室。さらに眺望が優れた客室だ。
間取りは、和室6帖+囲炉裏+和室8帖+踏み込み+洗面所+檜の内風呂(温泉ではない)+トイレ。
そして、やはり人気が高い露天風呂付き客室はすべて「別館」にあり20室を数える。
露天風呂付き580号室は、ガラス越しに阿寒湖を望む。間取りは和室12.5帖+板の間+踏み込み+洗面所+ウッドテラスに信楽焼の露天風呂+内風呂+トイレ。
露天風呂付き583号室は、望遠鏡を備える眺望豊かな客室。間取りは和室6帖+板の間+洗面所+ウッドテラスに信楽焼の露天風呂+内風呂+トイレ。
そして「別館」には587号室のようにリーズナブルな一般客室もある。こちらの部屋の眺望も見事だ。間取りは和室10帖+板の間(電磁調理器のある囲炉裏)+踏み込み+BT。
さらに「別館」には、小グループ用の客室(広々とした部屋に2つのトイレや専用のカラオケルームを備えた部屋)もあることを付け加えておく。
「新別館」の客室の窓からの眺望は森。客室の基本的な間取りは、和室12帖+板の間(電磁調理器のある囲炉裏)+BT。オーソドックスながら落ち着いた雰囲気の客室となっている。
「レラの館」は、いわゆるデザイナーズルーム。阿寒のローカル的な香りと和モダンの要素をミックスしたこの客室棟のエリアには、専用の談話室(ロビー)や、足湯などのパブリック施設も用意されている。ちなみに「レラ」とはアイヌ語で「風」のこと。
「レラの館」は、阿寒湖も見えない条件の悪い部屋を改装したものであるが、そのデザインのおかげで特に若い客層に人気だ。ローベッドを配した和洋室、洋室、和室の3つのタイプが用意されている。
例えば、「レラの館」653号室は独特の異文化の雰囲気が漂う客室(和洋室)。27インチテレビ設置。琉球畳風のふちなし畳9枚+ツインベッド(ローベッドタイプ)+ガラス張り洗面所+BT・・・の間取りとなっている。
各フロア(3F〜6F)の7部屋(全フロア合計28部屋)はグループでのフロアごとの貸切もOKで、30名まで泊まれてリーズナブルな料金設定になっているという。
また「レラの館」438号室のような角部屋(他に3部屋)は、阿寒湖の眺望を確保しており、民芸調のダブルベッド洋室となっている。26インチTV、ミニキッチン付き。BT付き。
「本館」客室は、窓からの眺めは期待できないが、落ち着いた雰囲気。和室の間取りは10帖+BT(ユニットバス)。洋室の間取りは、和4.5帖+洋ツインベッドルーム+BT。
また、バリアフリーの客室も「本館」には用意されていた。
食事についてだが、この宿は「別館」「新別館」の宿泊客のみが部屋食を選択できる。
その他、料亭「北璃宮」、メインダイニング「天河」、炭焼ダイニング「ケラアン」の3つの食事処から選べるようになっている。
料亭「北璃宮」は、新鮮な食材がズラリと並ぶ演出厨房と阿寒湖を一望する掘りごたつのお座敷が特徴。日本酒・ワインセラーも併設している。
「天河」は、いわゆるバイキングスタイル。和食、中華、イタリアン、そしてデザートのオープンキッチンを備える「鶴雅」のメインダイニング。約3000本にものぼるワインが収められているワインセラーもある。
炭焼ダイニング「ケラアン」は、2F「月見小路」にある食事処。炭焼きと会席料理をミックスしたダイニング。阿寒湖産ヒメマスの塩焼きや鹿肉ジンギスカンなど、阿寒ならではの味覚が堪能できる。全国から取り寄せた逸品が揃う日本酒・焼酎セラーも置かれていた。
ここで、「別館」露天風呂付き客室に泊まった場合(2008年7月取材)の夕食のご紹介をさせていただく。
食事場所は、料亭「北璃宮」だ。
食前酒はハスカップワイン。先付けはオクラと長芋(とろろ)にクコの実をのせたもの。長芋は網走郡の東藻琴産。
前菜は、おからのカレー風味、サロマ湖の北海縞海老(ホッカイシマエビ)、エゾシカ肉ソーセージ、釧路産の大根サラダ、プチトマト・マスカルポーネ煮込み、もろきゅうとワラビの味噌漬。
お造りは、中トロ、ボタンエビ、おひょう、いくら、苫小牧産の北寄貝(ホッキガイ)、オホーツクの生うに。北海道の海の幸満載。
先椀は、えんどう豆のすり流し。冷たくて食欲をそそる。南京だんご(道産のかぼちゃ)が入っていた。
ここで鍋物だが、牛しゃぶ鍋、たこしゃぶ鍋、かにしゃぶ鍋の中から選択制となる。この日は、かにしゃぶ鍋(ズワイガニ)をいただいた。
酢の物は、タラバガニ、道産アスパラ、トラウトサーモン(養殖のニジマス)、美幌産の赤黄トマト・・・が黄味酢の上にのっていた。
皿物は、アブラボウズ(釧路沖で獲れた深海魚)のあんかけ。道産の野菜を添えて。
焼物は、大助(キングサーモン)とナス、しいたけをはさんで焼いたもの。下の葉っぱは山ぶどう。ラディッシュの酢取りも添えられていた。
旬菜は、牛、アブラガニ、野菜サラダからの選択制となる。この日は十勝牛の陶板焼を選択した。南瓜、ミニサツマ、キャロットもいっしょにいただく。お肉は柔らかくジューシーだった。
蒸し物は、小樽産エゾアワビの玉蒸し。豆乳を使った茶碗蒸しのこと。青海苔餡かけ。鮑以外にも具に百合根が入っていた。
ご飯は、水だこの釜飯。水蛸は留萌産。三平汁の具は、時鮭、大根、にんじん、じゃがいも、焼き葱。香の物は、みょうが、なす、長ネギ、大葉、糸トウガラシの五目(たまり醤油)漬。
水菓子も選択制となる。フルーツの盛り合わせか、おしることワラビ餅、そしてケーキの中から選ぶ。この日はフルーツ(ふらのメロン、美幌すいか、ぶどう、キウイ)をいただいた。
北海道の海の幸、山の幸を充分にいただいた印象。質量とも申し分ない内容だった。
朝食も夕食同様、食材が豊富だ。
献立は、野菜ジュース、たらこ、ほうれんそう、焼きナス、青のり、昆布栄養煮、ダイヤサラダ(ししゃもの卵のからし和え)、大根おろし、サーモンルイベ(ルイベとは凍った刺身のこと)、だし巻き卵焼き、阿寒湖産ニジマス(オープンキッチンよりホッケなど魚を選択できる)、山菜田舎煮(わらび、ぜんまい、こごみ、菜の花)、漬物・・・と朝食ながらメニューはもりだくさんだ。味噌汁は厚岸産の大アサリ。ご飯は道産米「星のゆめ」の白飯か、お粥を選択できる。デザートはアロエマンゴー風味。コーヒーも付く。フルーツもそうだが、カウンターに行けば、さらに別種類のおかず(いくらの醤油漬け、とろろ、しらす、黒豆納豆、野菜サラダなど)もいただける。
2Fには「月見小路」と名付けられたフロアがある。ここには、カラオケルーム、ラーメン屋、ゲームセンター、ブティック、スナックがあり、夜のそぞろ歩きに最適だ。
また8Fには、ギャラリー「森の夢」がある。旅の醍醐味は、その土地の文化に触れること。「あかん遊久の里 鶴雅」では、北の大地に脈々と受け継がれている郷土の文化をアピールするためにこのギャラリーを作った。オーディオルームや図書室も設けられている。
室内には、ふくろうの木彫りで有名な瀧口政満氏の作品、味わい深い書は加藤秋霜氏の作品、そして熊の木彫りの藤戸竹喜氏の作品が所狭しと並んでいた。
また、このギャラリーにて、毎日夜8時半から、地元の有志によるお話が聞ける。内容はアイヌ文化、地元の伝統芸術、阿寒の草花、阿寒湖の生き物、マリモの神秘など。入場無料との事。
「あかん遊久の里 鶴雅」は、エステやマッサージなども充実している。
まず、エステだが1Fエステルームで受けられる「北海道ホワイトエステ」が人気だ。北海道の天然素材をたっぷりと配合した化粧品と温泉のリラクゼーション効果が期待できる。北海道の天然素材とは、阿寒湖の1000〜2500万年前の貝化石(プライオゾーァ)粉、ハスカップパウダー、紫竹ガーデンローズマリー美容液、十勝産黒豆スクワラン配合オイル、オホーツク海洋深層水など。
フェイシャル30分5,500円から。アロマボディトリートメントのフルボディで60分12,000円から。
また、客室まで出張してくれるサービス(基本的に「別館」露天風呂付き客室に滞在客限定)もある。こちらは別館「鄙の座」のエステシャンによるもので、アンチエイジング効果の高い自然派化粧品を使用している。フェイシャルコース40分6,300円から。その他、フットコース40分6,300円からと、全身オイルマッサージコースで「ロミロミ(ハワイ式)マッサージ」や、「リンパ(韓国式)マッサージ(いずれも65分13,650円)」などがある。
マッサージは、8F展望大浴場「天の原」前の「足裏健康法」がある。基本コースは30分3,500円(ひざから下)。ハンドケアも行っており、20分2,500円から。
同じく、「天の原」前にはショートマッサージコーナーもある。16:30〜19:30の時間限定のマッサージで料金は、10分1,050円、40分4,200円。
もちろん客室に来てくれる出張マッサージもあり、40分4,000円となる。
マリモの護り火「千本タイマツ」というイベントが毎夜行われている。阿寒湖の各旅館の宿泊客は、それぞれの宿泊施設からタイマツを借りて、「アイヌコタン」へ行進していくもので観光客と地元の人たちとの交流のイベントでもある。
その阿寒湖のアイヌコタンは道内一の規模を誇り、「鶴雅」からは徒歩1分ほどのロケーションにある。
中ではアイヌ古式舞踊を見学することができる。これは北海道唯一の国の重要無形民俗文化財に指定されている。その他彫刻師による伝統民芸品の販売も行っている。
おみやげもオリジナルものが充実している。
「ラクルウォーター」は、「鶴雅」オリジナルの阿寒湖温泉100%の化粧水。「ラクル」とはアイヌ語で「霧」のこと。霧のように肌を柔らかく潤すミストタイプの化粧水。温泉成分の「メタケイ酸」を多く含むため、美肌と保湿効果が期待できる。
「抹茶まりも餅」、「熊笹まんじゅう」なども人気があるが、岡女堂本家の豆菓子なども評判がいい。日本一の豆の産地、十勝の本別町の工場で製造された甘納豆や素焼きの豆は美味しい。
また、「鶴雅」オリジナルの地ビールもあった。原料に北海道産の有機無農薬栽培の麦芽を使用したオーガニックビール。コクのある焙煎麦芽タイプとスッキリとした淡色麦芽タイプの2種類ある。
前述のように「あかん遊久の里 鶴雅」は、全国的に知られた人気旅館になったわけだが、その秘密、要素をここで少しずつ紹介させていただく。
まず、客室に置かれたアンケート用紙だが、フロントに回収されると、即日処理され、満足度を点数化して翌日の朝礼で発表する。
客室内には、ソーイングセットと老眼鏡、ばんそうこう、胃薬などが当たり前のように置かれている。
和室の場合、夜寝る時、畳の上に布団を敷くため、洋室のベッド横にあるようなコントロールパネルが無い。だからこそ、和室には電話や照明がコントロールできるボックスを枕元に備えてくれる。
浴衣は着崩れして苦手という人は多い。そこで着心地のいいパジャマも用意されていた。
コーヒーメーカーも客室に常備され、いつでも好きな時間にコーヒーが飲める。
客室のルームキーも2つ用意してくれている。夫婦の入浴時間が違ってもキーが2つあれば問題ないというわけだ。
冷蔵庫も客室に2つある。有料の飲み物が入っている冷蔵庫とは別に、自由に使える冷蔵庫も備えている。
夜食におにぎり、冷凍庫をあけると自家製アイスがあったり・・・などなど、ひとつひとつは小さいことながら、これがいくつか積み重なっていくと大きな満足につながる。
このような小さなサービスの多様化は、そのアンケート用紙からのリクエストから考えられてきた。
館内におけるスタッフの配置も見事だ。チェックインの午後3時すぎの時間帯になると、ロビーは予約客でごった返す。ところが、スタッフがどこからともなく現れ、手際よく客室へ誘導し、瞬く間にお客がロビーから姿を消す。何かトラブルが発生したり、子どもが迷子になったりしたら、やはりスタッフが現れ対処する。
ここにもこの宿の秘密が隠されている。実は事務所にコントロール室を設置していて、館内に設置された80台のカメラによりここでモニターしているのだ。何かあった場合、管理スタッフは、即座に担当のスタッフに連絡し対処させる。この集中管理システムにより、スタッフの適正配置や客の要望、クレームの処理など迅速に行うことができるのだ。
例えば、まだ仕事に慣れない新人スタッフがお客との対応に困っている場合でも、コントロール室から的確なアドバイスをしたり、ベテランスタッフをその場に派遣したりできるわけだ。
この人気旅館を率いるのは北海道有数の旅館ホテルグループの総帥、大西雅之氏。1955年生まれ。「あかん遊久の里 鶴雅」の前身、「阿寒グランドホテル」が創業した年に生まれた。
1989年に先代の父に代わり社長に就任後、数々の改革と施設のリニューアルを敢行し、今ではここ「あかん遊久の里 鶴雅」、「あかん鶴雅別荘 鄙の座」、「阿寒の森ホテル 花ゆう香」、「北天の丘 あばしり湖鶴雅リゾート」、「サロマ湖鶴雅リゾート」と次々に開業し成功させた。
2008年には道東を飛び出て支笏湖でもホテルを買収し、次なるリニューアルを考えている。
2003年には国土交通省から「観光カリスマ」にも選出された。
前述のJTB以外にも、「あかん遊久の里 鶴雅」は評価されている。
2006年度の観光経済新聞社主催の“旅のプロ”が選ぶ「人気温泉旅館ホテル250選」の中で、5つの部門のうち、「お風呂」「施設」「雰囲気」で1位、「料理」「サービス」で2位。つまり総合で1位、ここでも日本一の栄冠を手にした。
しかし、ここで少し考えなくてはならない。ただ、“旅のプロ”が選んだといっても、それはいわゆる旅行代理店(以下エージェント)のこと。つまり、エージェントに客室を提供し送客の契約をしなければ、その宿の評価はしにくい。
エージェントにとっては、大量のお客を宿に運べば、それだけ宿から手数料がもらえる。たくさんの手数料を稼げる(宿泊料金も高めの)旅館ホテルが、彼らにとっては優良旅館なのだ。したがって、この投票システムでは日本全国の温泉旅館での真のナンバーワンなど選びようがないわけだ。
現在、日本の温泉宿は、20室以下の小規模の施設の方が、人気が高いと言われている。それは経営者の多くがこう言う。「お客に目が届く範囲はこのぐらいの規模が一番なんだよね。」と。
つまり客層をある程度絞ってマーケティングをしているため、顧客満足度も高くなってくる。しかも小規模旅館で人気のあるところは、際立ってリピーター客も多いし、客室稼働率も年間通して高い。そして超人気宿はJTBなど大手エージェントに客室提供もしていない。
ここ「あかん遊久の里 鶴雅」はどうか。残念ながら、多忙のためか大西社長の姿はほとんど見ることができない。しかし、この宿には優秀な支配人もいれば、優秀なスタッフも揃っている。そして宿を運営する、お客を喜ばす“システム”が稼動しているから凄い。
200室を超える大型旅館にも関わらず、20室以下の人気旅館のようにお客への心配りをする準備がスタッフそれぞれに身についているようだ。
“旅のプロ”=旅行代理店(エージェント)が選ぶ旅館ホテルにも、いい宿があったのかと取材してわかった。
これからもこの宿は「鶴雅グループ」の中核を成す。だからこそ、これからのこの宿の将来が非常に興味深い。
今でも年間40社もの温泉旅館ホテル関係者が、この宿に訪れるという。少しでも、自分の宿のために繁盛する仕掛けを勉強する(盗む)ための視察だ。
ただ、この「大西システム」がこれからの時代、ずっと通用するわけはないと、大西社長自身は感じているはずだ。
といっても、大型温泉(観光)旅館の中で、考えられる、できる限りのサービスや施設をそろえた「あかん遊久の里 鶴雅」は、やはりこの日本の温泉旅館ホテルの中では、一歩先を行っている感はある。
今後は、北海道・道東の観光資源のさらなるアピールと、地域の活性化への努力をさらに力を入れていくのだろう。それは、観光施設(ハード)の充実やサービスを多様化する事ではない。
北海道の道東という、日本の中でも大自然が多く残された、唯一無二の「自然遺産」を見直せば、おのずと次の展開、アピールが考えられるはず。
だからこそ、大西社長の次なる一手が楽しみでならない。
最後に「あかん遊久の里 鶴雅」に泊まるなら、絶対にエージェントを通さず、公式HPからネット予約すべし。5%の割引特典が付くからだ。(J)