長野県のほぼ中央に位置する、諏訪市、岡谷市、諏訪郡にまたがる諏訪湖。
周囲約16km、面積は約13kuで、信州最大の湖である。
四方を山に囲まれた諏訪盆地(標高759m)にあるため、寒暖の差が激しく、厳冬になると、諏訪湖が全面氷結することがある。
この時、有名な「御神渡り(おみわたり)」という神秘的な現象が起こる。
これは、昼夜の寒暖の差によって氷が収縮と膨張を繰り返し、その圧力から大きな音を立てて割れて、帯状にせり上がることをいう。
最低気温がマイナス10℃を超える日が続くと発生しやすいというが、近年では、地球温暖化の影響もあり、平成元年〜平成21年の間に、6回しか観測されていない。
ちなみに地元の人たちは、「御神渡り」が見られなかった場合は「明けの湖(あけのうみ)」と呼ぶとの事。
また、「御神渡り」に関しては、ロマンチックな伝説が今に伝えられている。
遥か昔のこと、諏訪大社の男神と女神が、上社と下社で別れて暮らしていた。
上社に居た男神は、諏訪湖を挟んで対岸にある、女神のいる下社まで容易には行けなかった。
すると男神は、諏訪湖が凍結した時に、湖上を歩いて会いに行ったのだ。その時の足跡が、"御神渡り"となったのだという。
諏訪湖にぽっかりと浮かぶ「初島」は、昭和29年(1954年)に、諏訪湖上煙火大会(現・諏訪湖祭湖上花火大会)の打ち上げ場として造られた人工島である。
夏は、連日のように花火が打ち上げられ、盆地にこだまする音は圧巻。
その他にも、マスコミにも大々的に取り上げられる7年ごとに開かれる「御柱祭(おんばしらさい)」や、10月の諏訪湖マラソン、冬のワカサギ釣りなど、諏訪湖の見所は様々あるのだ。
周囲に、霧ヶ峰高原、白樺湖、蓼科高原などがある諏訪は、観光の拠点としても交通の便がいい。
首都圏からのアクセスも容易で、新宿から上諏訪まで高速バスが運行しており、3時間もあれば到着する。
電車であれば、JR新宿駅からJR上諏訪駅まで、特急で2時間20分ほどだ。
近年、街全体でイルミネーションの点灯を実施しており、中央自動車道・諏訪ICから市街と湖を見下ろすと、美しい夜景が広がっており、ドライブ好きの方に人気のスポットとなっている。
諏訪湖の温泉に関する歴史は古く、はっきりとは分かっていないが、鎌倉時代の文献にその名が記されている。
温泉地としては、地図上で下(南)にあるのが、上諏訪温泉。上(北)に位置しているのが、下諏訪温泉と呼ばれている。
上諏訪の方は、江戸時代に中山道随一の温泉宿場町(上諏訪宿)として栄え、明治・大正時代には、島崎藤村や芥川龍之介ら、数多くの文人墨客がこの地で投宿したという。
日本が近代化を始めた時代、明治44年(1911年)に創業したのが「ホテル鷺乃湯」。
2011年で創業100年を迎える上諏訪きっての老舗旅館だ。
諏訪湖の横を走る湖岸通り沿いに建ち、目の前には諏訪湖畔公園がある。上諏訪駅から徒歩7分ほどなので、電車で訪れる方も便利だ。
館内に一歩踏み入れれば、老舗の風格を感じさせるロビー・エントランス。
チェックイン時には、上品な和菓子と梅茶をいただいき、旅の疲れを癒してくれる。
客室数55室のこの宿は、本館「白鷺亭」と新館「秀蘆閣」が並び建ち、その間には吹き抜けになった中庭が設けられている。
この見事な方丈庭園は、京都の龍安寺を彷彿させ、日本古来の美を感じさせてくれる。
基本的に中に立ち入ることはできないが、神前式など行われる際は、庭園上にあるステージも舞台として使われることもある。
また、宿の敷地内には、つがいの孔雀が住んでいることでも有名。
日中は屋根の上などにいることも多いが、庭に降りてくることもあり、運が良ければ一緒に記念撮影ができる。
4月〜7月には立派な羽を広げることもあるとのこと。
この庭園の横には、癒しのスポットとなっている足湯が設けられている。
足湯の隣りのもう一つの庭では、山桜、赤松、ノウゼンカツラ、ノムラモミジ、ヤブツバキ、つつじ、ななかまど、モクレン、ウメモドキ、まるめろ、バショウといった花木が見られる。

江戸〜明治の時代には、田んぼからポコポコと湯が湧き出でていたという上諏訪温泉。
大正12年(1923年)ごろまで、その泉質は、硫黄を多量に含んだ白い濁り湯だった。
浴槽に付着する硫黄成分が、美しい鳥の白い羽のように見え、いつしか人々は、「さぎ(鷺)の湯」と呼ぶようになったのだという。
関東大震災を境に、その白濁した湯の泉質は変化し、現在温泉組合が管理しているのは、弱アルカリ性の「単純温泉」。
だが、「ホテル鷺乃湯」で使用している温泉は、「ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉」だ。
豊富な自家源泉を3本持っており、地下100mのところから引き上げ、混合させて使用しているのだ。
旧泉質名は「含土類−重曹泉」で、薄い琥珀色をしている。
pH7.58の弱アルカリ性で、刺激の少なく肌に優しい感触。
「炭酸水素塩泉」は、石鹸のように皮脂や余分な老廃物を乳化して洗い流す作用のため、肌もツルツルになる反面、急速に体温を下げることにもなり「清涼の湯」とも言われている。
さらに、ナトリウムイオンの次に多く含まれる、カルシウムイオンは鎮静効果があると言われている。
その他、非解離成分では、天然の保湿成分・メタケイ酸を、168mg/kgも含んでいる。
50mgを超えれば、それだけで"温泉"の資格と言われているが、その3倍以上もあるのだ。
化粧水のような温泉と言われる所以でもある。
このようにデータを見ても、「弱アルカリ性」+「重曹泉」+「メタケイ酸」と、美肌効果が期待できる3要素が揃っていることで素晴らしい温泉だと認識できる。
特に、女性に嬉しい泉質と言えるだろう。
前述のように、上諏訪温泉の一般的な「単純温泉」は、試験水1mgに含まれる溶存物質は560〜700mg/kg程度。
「ホテル鷺乃湯」の源泉は、1,228mg/kgなので、単純に言えば、およそ2倍濃い温泉なのである。
上諏訪で、温泉成分にこだわるのであれば、この宿を選んで間違いないだろう。
この宿の男女別大浴場は、内風呂に2つの露天風呂が備わった広々とした造り。
大きな露天風呂と内風呂は、湯をかけ流しにしつつ、循環させ、適温に保っている。
露天風呂の屋根は、平成3年(1991年)のリニューアルの際、玄関で使われていた唐破風造りの車寄せの部分を移築して造られており、宿の歴史を感じさせてくれる。
しかしながら、小さな陶器の露天風呂は、「ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉」の源泉100%かけ流しの湯が楽しめる。
加水や加温を一切していないので、夏は熱く、冬は少しぬるいかもしれない。源泉かけ流しならではの不便さだが、これも(温度調節のされた)大きなお風呂があるので不満は無いだろう。
こちらの大浴場は、チェックイン〜翌朝9:30まで利用が可能。夜間の利用もできるので便がいい。
深夜0:00〜0:30の清掃時間の後に、女湯と男湯の入れ替えがある。
脱衣所には、マッサージチェアなど備わり、アメニティ類など充実していた。
その他の施設としては、1階にクラブ「冠鳥(カントリー)」がある。
落ち着いた大人の空間が広がり、カラオケとフリードリンクがセットになったパックが、小グループの方に人気。
この宿の施設・館内を見ていくと、感じられるのはやはり老舗和風旅館の風格。
雅な雰囲気の庭園、その横を通るギャラリーのような渡り廊下など、上質な大人の時間を過ごせそうだ。