「シーサイドホテル鯨望荘」は、三重県東部の伊勢志摩国立公園の最南端に位置し、雄大な太平洋、熊野灘と、優美な真珠の海英麌湾(リアス式海岸)に囲まれた温暖で風光明美な場所に建つ。
中部国際空港からは車で約180分、最寄りの近鉄賢島駅からは車で約25分ほどである。
鳥羽方面から国道167号線を南下し、賢島の手前、鵜方で右に折れ、入り組んだ海岸線をしばらく走り、国道260号線に出ると、「鯨望荘」は目の前だ。
国道に面した正面玄関から入ると、海側から日が差し込む明るいロビー正面に、この宿のシンボル、ガーデンプールがあった。
その先には水平線が丸く見える、広大な太平洋が広がる。
ロビーからガーデンプールのあるテラスに出ると、白い建物と海の青さのコントラストが目に眩しい。
ここは南イタリアの地中海に面したホテルかと錯覚するほど、異国の雰囲気が漂う。
また、この独り占めする海の眺望だけでも、この宿を選択して良かったと確信するはずだ。
と言いながらも、ここは日本。寒い時期などはやはり温泉が恋しくなる。
しかし、この宿にはその日本的な“おもてなし”も、当然のように用意されていた。
ただし、ここは元々温泉が湧出するエリアではないため、近くの南勢桜山温泉から温泉を運んでいるという。
この宿の温泉は、5Fと3Fの大浴場、そして貸切展望風呂「波花」と「潮香」で使われている。
5Fの大浴場は内風呂+露天風呂、そして3Fの大浴場は内風呂+ジャグジー内風呂の組み合わせ。
これをその日により、男女別交替で利用することになる。
5Fにある大浴場、太平洋展望露天風呂「つばすの湯」は、その名の通り、大海原の大パノラマを見ながらの湯浴みが楽しめる。
海に浮かぶ船や、空を舞う鳥などを眺めながら、旅情気分を味わおう。
夜は月が出れば、海面にその明かりが映り、それは昼間とは違った幻想的な印象。
5Fと3Fの大浴場の内風呂は「展望くじら風呂」という。
ガラス越しに海が望め、湯舟にはくじらが泳いでいた。
くじらはアフリカ産の天然御影石「ジャズバーグ」という石で作成されたものだ。重さも4トンあるらしい。
3Fには露天風呂の代わりに、ジャグジーバス「きらめき」がある。
ジェット噴流の気泡が筋肉の疲れを心地よくほぐし、活性石(天然鉱石)とお湯の循環効果で、肌に優しいもみ湯を作り、体を芯まで温める効果があるという。
「鯨望荘」は全35室。シーサイドホテルということだが、ほとんどが和室(33室)の構成。
全室オーシャンビューというのは、海が好きな方には堪らないはずだ。
客室のタイプは大きく分けると4つで、本館客室、新館客室、和モダン客室、そして、2008年にお洒落な客室がデビューした。
その部屋の総称は「海のSuite」(全4ルーム)といい、個性的な半露天風呂が備わる。しかしながら、そのお風呂は海側にはなく、反対の入口側に置いてあった。
ただし、その風呂からも部屋越しに海が見えるような工夫はされていた。
その特別室の前の廊下は、露天となっており、浜島の漁師町の裏路地をイメージしたものになっていた。
所々に漁具などが置かれて、漁師町の風情を醸し出している。
快適な設備も当然のごとくあり、32インチ液晶TV、加湿機能付き空気清浄機、冷蔵庫、お洒落な洗面台などが用意されている。
305号室「土の間」と307号室「紙の間」は和室。畳は琉球畳を使用。定員5名。
「土の間」のテーマは土と星。天体望遠鏡が用意されていた。星をイメージしたインテリアと、丁寧に仕上げられた滑らかな木の手触りのクラシックモダンな家具が特長。テラス付きの半露天風呂には、信楽焼の陶器製の浴槽が設置され、坪庭には地元網元の旧家の瓦が使われていた。
「紙の間」のテーマは紙と潮香。和紙を使用した照明器具や和紙プリーツスクリーンを採用したカーテンなど、インテリアの細部にまで和紙にこだわっている部屋だ。テラス付きの半露天風呂には、長野県木曽地方の木を使った木桶浴槽が設置されていた。ここの洗い場のユニークなのは防水加工の畳が使用されている点。
306号室「木の間」と308号室「石の間」は、いずれもツインベッドの洋室だが、「石の間」のベッドの下には畳が敷いてあった。定員2名。
「木の間」のテーマは木と夕陽。夕陽をイメージしたインテリアと、木の素材感を生かした内装材や家具が特長。カーテンにはウッドブラインド、イス、スタンド、時計に至るまで全て木を使用したやわらかな雰囲気の部屋だ。テラス付きの半露天風呂には、伊勢神宮にも採用されている長野県木曽地方の木を使った木桶浴槽が設置されていた。
「石の間」のテーマは石と波音。波をモチーフにしたベッドや照明器具、さらには丁寧に仕上げられたモダンな家具は、琉球畳とフローリングのコンビの床に非常にマッチしている。テラス付きの半露天風呂には、御影石をふんだんに使った石張りの浴槽が設置されていた。モノトーンのような空間は、大人向けの雰囲気をも醸し出している。
面白いのは、305号室「土の間」と、308号室「石の間」は隣の和室とコネクティングルームになること。
「海のSuite」は、どちらかと言えばお二人様用の部屋でもあるが、コネクティングを使えば、三世代での旅行や小グループにも利用価値はある。
一般客室はすべて和室となる。
和モダンの部屋は、縁なしの琉球畳を使った10帖と、木の持つあたたかな質感が特徴の天然銘木を使用したフローリング3帖という間取りだ。
デザイナー家具や間接照明、インテリアなどもこだわっている。
さらに、部屋からの景色を最優先するためにワイドサッシも使用。
新館の客室は、10帖+4.5帖の二間続きの和室か、15帖の和室。こちらも太平洋一望の部屋となる。
一番リーズナブルで標準的な本館の客室は、10帖部屋。
一般客室にしても、「鯨望荘」はすべてオーシャンビューで、そしてバス・トイレ付き。
快適な空間が用意されている。
夕食は、部屋または食事処でいただくことになる。
「海のSuite」専用のダイニング「艪庵(ろあん)」はリニューアルしたばかり。畳の上にテーブルを配置した、寛げる空間がある。
ここで「シーサイドホテル鯨望荘」の夕食の一例(2008年9月上旬取材)をご紹介しよう。
食前酒は山桃酒。
先附けとして、地元産このしろの酢漬けに茗荷、カイワレ、クリスタル、ラレッシュで和えたもの。ちなみに、このしろの小さなものは”こはだ”と呼ばれている。クリスタルは海藻のエキスから作られた食材だ。
前菜は、とこぶしの旨煮、魚のすり身を卵焼き状にした福紗焼き、じゅんさい菜た豆の花添え、青梅のくず巻き、海老とサヨリの手綱がでた。
お造りは、伊勢湾で獲れた紋甲烏賊、かんぱち、キハダマグロだ。また、別皿で南伊勢町の海女さんより仕入れた鮑、ヒラメとヒラメのエンガワのお造りがでた。
焼き物は、三重県産松坂周辺の黒毛和牛の石焼き。アメリカテキサス産の岩塩とレモンでいただいた。松坂牛のコースを選んだ場合は、その肉の証明書がもらえるとの事。
次に、ワカメそばの冬瓜あんかけ炙りむつ添え。粒トウモロコシとネギでいただいた。
冷やし鉢は、冷製玉子豆腐のオクラとろろあんかけ海老添え。具材は、筍まちくとキクラゲ。
次が”海女達が焚き火で伊勢えびを丸ごと焼いて食べた”ことに由来する名物「浜島焼」がでた。地元産天然活伊勢海老とサザエ、アッパ貝を目の前で生きたまま豪快に焼き上げる。出来立てをいただいた。
締めは、雲丹、ゴボウ、人参、三つ葉の炊き込みごはん。米は、地元三重県産のこしひかり。枝豆豆腐、百合根、生湯葉のお吸い物。香の物の盛り合わせと一緒にいただいた。
デザートは、隣町南張で作られた南張(なんばり)メロン、マンゴー、抹茶ゼリー。
夕食は、以上だ。地物から遠洋物まで様々な旬の魚介が一堂に会す海の恵の宝庫、浜島。その素材を料理長自らが確かな目で吟味し、大胆かつ繊細な包丁さばきと、素材を生かす料理法で持ち味を最大限に引き出している。また、浜島焼は目でも楽しめるため、食が進むこと間違いなしだ。
今回のメニューは宿泊料金お一人様23,000円のグレードとの事。
朝食も夕食同様に、部屋または食事処でいただくことになる。
朝食の一例(2008年9月上旬取材)をご紹介しよう。
浜島港で水揚げされたかますは、その場で焼いていただく。お造りのイカも浜島港で水揚げされたもの。6点盛のお皿には、ほうれん草のお浸し、イカの黄金和え、ピリッとした味付けのはりはり大根つぼ漬けとしらす、カツオの酒盗、アスパラの胡麻和え、クラゲの中華風。出汁巻き卵にはふきの煮物が添えられている。炊き合わせは、高野豆腐に魚のすり身をはさんだもの、がんもどき、かぼちゃ、ふき。それに別皿でタイのカブト煮が付く。味噌汁の具は、伊勢海老とワカメ。デザートは、地元産の久居梨が出た。
魚介類も旬がある。
春・夏は、鮑、宝彩エビ、イサギ、なまこ、かつお、かます、あじなど。
秋・冬は、伊勢エビ、たこ、かさご。
冬限定は、あのりふぐ、かき、アオサ海苔など。
このホテルに泊まれば、極上の素材を使った料理が確実にいただけるのだ。
南国の雰囲気をひときわ醸し出しているガーデンプール「パノラーマ」は、7月の第一土曜日から9月の第二日曜日まで利用可能だ。
ロビーからガラス越しに全体が見渡せるため、比較的監視の目が行きとどき、現在まで一度も事故が起きていない。お子様づれでも安心して利用できる。
また、プールサイドには通常のテーブルとイスのほかに、デッキチェアーも用意されているので、日光浴やカップルでの語らいの場としても利用できるだろう。
御座岬の灯台の明かりが届く、夜のプールも幻想的でオススメだ。夏などはプールサイドでお酒を飲みながら夕涼みもよいのではないだろうか。
貸切の岩盤浴「渚」がオープンした。
天然檜製専用健康枕と木枠に青森ヒバの高級木材を使用した浴室は、遠赤外線の熱エネルギー効果により、低温でありながらも、体を芯から温め発汗作用によく働く。また、体に優しい天然素材の緑茶に含まれるカテキンと、フラボノイドなどの緑茶ポリフェノールでお部屋の空気をリフレッシュしているため、すぐれた消臭効果だけではなく、天然のエッセンシャルオイルを調合したナチュラルな香りも楽しめる。
岩盤の温度は、夏は55℃、冬は65℃だ。45分(ハーブティー付き)、2名様1室利用でお一人2,500円、1名様1室利用でお一人3,000円。
地下1階のパーティールーム「フェスタ」には卓球台が設置されていた。30分500円。
「鯨望荘」は夜も楽しみがいっぱいだ。
ナイトラウンジ「マーレ」では、ライトアップされたプールサイドの夜景を眺めながら、落ち着いた雰囲気でお酒とカラオケが楽しめる。
その奥にはラウンジのVIPルーム「ルーナ」がある。カラオケを充分に楽しみたいならここを予約しよう。
カウンターとテーブル席の夜食処「夕凪」は、こぢんまりとしてはいるが置かれているお酒にはこだわりを持っている。"中々"や"き六"といった本格焼酎の他、焼酎ファンの方はご存じだろうが、希少価値が高く、なかなか手に入らないといわれている"野うさぎの走り"や"百年の孤独"まで揃っている。ともに小グラス1杯1,050円だ。食事は、おでん、ラーメン、伊勢うどん、おにぎりなどがある。営業時間は21:00〜24:00。
「鯨望荘」にチェックインすると、女性には、カラフルな浴衣の有料レンタルサービスがある。
また、アロマオイルのセットをフロントで貸し出している。"リラックス効果"、"リフレッシュ効果"、"エナジー効果"、"ムーディー効果"のエッセンシャルオイルを取り揃えているので、お気に入りの香りが見つかったら試してみてはいかがだろうか?
2007年3月には、リフレクスルームがオープン。
男性も利用できるエステ&リフレッシュサロンだ。"フェイスケア"が30分3,000円、"フットハンド"が20分2,500円、"ボディケア"が30分3,500円、"全身ケア"が50分6,000円。
館内には、地元三重県生まれの田岡正毅氏(アートディレクター)のプロデュースによる、「くじら」のギャラリーが常設展示されている。数十人のクリエイター達に「鯨望荘」のために、新たに「くじら」をモチーフにイラストを描いてもらったそうだ。ここにある作品は、全て世界で一枚しかない原画だ。
お土産は、ロビー奥のスーベニアショップ「アックアーリオ」で手に入る。
くじらをモチーフにしたオリジナルのポストカードやフォトスタンドの他、オリジナル手作り陶器など人気の商品が並ぶ。
また、客室で出されるお茶請け菓子なども販売されていた。
部屋から海を眺めていると、少し沖にいく艘もの舟が浮かんでいるのが見られる。これは海女さんの乗る舟で、漁をしているのだ。夕食には海女さんの手で獲られた貝類も並ぶ。
「鯨望荘」の目の前は黒崎海岸。遠浅ではないので海水浴には向かないが、シュノーケリングが可能だ。
そして、なんといってもこのホテルに泊まったら、夕陽が見たい。
空と海全体がオレンジ色に染まる瞬間が眺めれば、なおいっそう思い出に残るに違いない。
ここでは、フロントにて画材一式をご出発(チェックアウト時)まで無料で貸し出しするサービスもあるという。刻々と変わる景色を描いて、浜島の自然の造形美を想い出に残すのもいいだろう。
「シーサイドホテル鯨望荘」は、伊勢志摩国立公園の最南端、熊野灘と英麌湾に囲まれた温暖で風光明美な場所に建つ。
春は、スペイン村や合歓の里の観光、志摩自然学校(英麌湾体験ダイビング&ヨットセーリング、シーカヤックランチツアーなど)、海女漁の見学(8:00〜11:00)などができる。
夏は、大矢浜海水浴場(遠浅の白い砂浜)では、魚のつかみ取りなどが人気だ。ホテルからは徒歩10分で、送迎もある。
秋は、10月1日より伊勢エビ漁が解禁となり、サシ網漁も見学(AM4:00〜)可能だ。
冬は、フグや牡蠣の季節。雪が降らず比較的温暖である。お伊勢参りの観光客が多く訪れるそうだ。
四季折々の楽しみ方ができる伊勢志摩エリアは昔も今も観光地としてはパワーがあるのは確かだ。
そんな周辺の環境に恵まれた「鯨望荘」には、公式HPを見ると、様々な宿泊プランがあるのがわかる。
例えば、「ハートタッチプラン」は、1日2組限定だが、チェックイン13時、チェックアウト11時となり、新館の広い部屋に通され、カラー浴衣が無料など、女性客やカップル客に嬉しい特典が付いてくる。
また、公式HP限定のプランでは、活きた伊勢海老とサザエを豪快に焼く浜島焼のプランや、メインの伊勢海老か鮑を選べるプラン・・・といくつか用意されている。
冬はてっちり鍋もオススメだ。
「シーサイドホテル鯨望荘」は、以前は浜島町内の海辺の釣り宿(屋号は「東明館」・昭和3年創業)だったものを、2代目社長が昭和14年に現在の地に移転して「鯨望荘」に改名して営業がスタートした。
改名のきっかけは、昭和のはじめに最近あまり姿を見せることのなかった鯨が、ホテルすぐ前の黒崎海岸に現れたことに始まる。
とても大きな鯨で、その海に10日間も滞在した。それを見た当時の社長が、約80年もの歳月を生きる鯨にあやかり、訪れるお客様の長生きと健康の願いを込めて「鯨望荘」と命名したのだ。
鯨のように幅広い層のお客様に愛され、かわいがっていただける施設を目指し、平成8年3月には、太平洋展望露天風呂「つばすの湯」を増築した。
現在は平成14年に引き継いで岩崎正勝さん(昭和36年生まれ)が4代目館主となっている。
そして、実際にゲストを迎え入れ、支配人的な仕事をこなしているのは実弟で副社長の充宏さん(昭和40年生まれ)。二人三脚でホテルを取り仕切っているのだ。
「シーサイドホテル鯨望荘」は、温泉旅館の気軽さと、リゾートホテルの寛ぎ感、開放感の両方の魅力を兼ね備えた宿泊施設と言える。
日本人の欲張りなリクエストに応えたら、こんなホテルができました・・・みたいなところか。
オーシャンビューの客室、南ヨーロッパを感じさせるプールとテラス、太平洋を一望の展望風呂と露天風呂、地の伊勢海老や鮑など旬の魚介類を堪能できる料理、エステ・岩盤浴はじめ多種多様なサービス施設、新設されたスタイリッシュなスイートルーム・・・・・と、次々とアピールポイントがあげられる。
これはやはり経営陣の真面目さ、お客に対する真摯な向き合い方から来るものだろう。
だからこそ、このホテルは評価できる。
あなたも是非このホテルで快適な時間を過ごして欲しい。(J)