「あじ蔵CaroCaro」は、三重県の東部、伊勢湾の入口付近に位置し、中部国際空港からは車で約150分、最寄りの鳥羽駅からは車で約20分ほどの距離にある。
宿の隣は、麻生の浦(おおのうら)大橋というロケーションだ。
パールロードの一部でもある麻生の浦大橋は、歩いて渡ることもできる浦村町今浦と本浦を結ぶ延長196mのバスケットハンドル型ニールセンローゼ橋で、神奈川で造られたあと、船で運ばれ、昭和48(1973)年に竣工された。
当初は白く塗装されていたが、現在は銀色の塗装となっている。生浦湾に架かる橋であるが、古来和歌に麻生の浦と詠まれていたことから麻の字が頭に付けられている。
橋上からの眺めは素晴らしく、正面には麻倉島と大村島、その周囲には牡蠣の養殖筏が並ぶ美しい景観だ。鳥羽十景の一つにもなっている。
パールロードは、鳥羽市から志摩市までを結ぶ全長38.6kmの道路で、2006年まで有料道路であったが、現在は無料となり、県道128号鳥羽阿児線となっている。
自然保護と沿線開発を目的に整備された道路であり、志摩スペイン村へのアクセス道路でもある。沿道には、伊勢神宮・鳥羽水族館・石鏡漁港・鳥羽展望台などたくさんの観光スポットがある。
鳥羽からパールロードを石鏡方面に向かうと、その麻生の浦大橋が見えてくる。
橋を渡る手前右手に看板があるので、その道を入っていくと右手に「あじ蔵CaroCaro」と書かれた白い建物が見えるはずだ。
「あじ蔵CaroCaro」とは少しユニークな屋号だ。
「CaroCaroかろかろ」とは、万葉集に出てくる”気軽に”の意味の「かろうかろう」と、イタリア語の”親愛なる・・・”の意味の「caro」からきているそうだ。
オープンしたのは平成9年であるが、客室に関しては、その頃の面影は現在はほとんどない。
平成18年7月に大規模なリニューアルを施したからだ。
部屋で過ごす楽しみを宿のコンセプトに改装を行い、そのためチェックアウトは12:00となっている。
昼の時間帯は、お食事処「オイスターバーあじ蔵」をレストランとして開放し、11:00〜14:00までランチコースを提供している。
また、夜の時間帯は宿泊客以外でも、1日2組限定の予約制ではあるが、17:30〜21:00までディナーコースを提供している。
さらに、食事つき貸切風呂プランも提供しているため、温泉も楽しみたい方にもおすすめだ。
このプランはランチコースに一人525円追加するだけで利用できる。ただし、事前予約が必要で、しかも火曜日はお休みなので注意をしていただきたい。
「あじ蔵CaroCaro」の温泉は、姉妹館である「サン浦島 悠季の里」から引き湯をしている。その温泉は、貸切風呂2つと、客室4部屋に利用されている。
泉質は、アルカリ性単純泉で、pHが9以上もあるため、ヌルヌル感が強い美肌の湯となっている。
客室のタイプは、大きく分けると和室1部屋、和洋室2部屋、洋室4室の3タイプであるが、全7部屋ともにそれぞれ印象の違う造りになっている。
各部屋に備わるお風呂も個性豊かなもので、4部屋が温泉を使用して、そのうち3部屋が露天風呂となっている。
温泉を使っていない客室でも、防水テレビが設置されているところもあった。
温泉を使用している部屋は303号室、304号室、305号室、202号室(内風呂)だ。
露天風呂付き客室の303号室は、この宿では特別室扱いだ。レイアウトは和洋室の構成となっている。
洋室にはセミダブルサイズのツインベッドが置かれ、3名以上の利用の場合は和室に布団を敷いて利用する。
和室はシンプルな6帖間であるが、琉球畳が敷かれている。テレビは32インチ液晶。
部屋付き露天風呂は八角形の石造りの湯舟。2人で入っても充分な大きさだ。定員5名。
同じく露天風呂付き客室304号室、305号室は、洋室タイプ。
304号室はセミダブルサイズのツインベッド。305号室はクイーンサイズ(幅1700mm)のダブルベッド。
304号室の露天風呂は古代檜を使った湯舟で広々している。テレビは26インチ液晶。
305号室の露天風呂は陶器製で少し小ぶりだが、海が見えるところがポイント高し。テレビは32インチ液晶。
両部屋とも定員2名。
温泉内風呂の部屋は202号室で、この宿唯一の和室となる。畳の上にベッドが置かれているお部屋だ。
隣の和室にはマッサージチェアが置かれている。テレビは26インチ液晶。
温泉の内風呂の浴槽は石造りであるが、縁は檜が使われている。定員3名。
302号室は和洋室。畳の上には2つのベッドが置かれている。TVは32インチ液晶。お風呂は温泉ではないが、檜の湯舟が心地いい。定員5名。
301号室は、ツインベッドの洋室だ。この部屋は、室内全体が白で統一されており、ベッドカバーやイス、テーブルまでがウエディングドレスをイメージさせる。また、枕元の壁にはレースのカーテンと白いバラをイメージした装飾が施されている。さらにはスイッチ一つで、装飾全体が光りだすという懲りようだ。
部屋と浴室の境の壁はガラスとなっており、ブラインドを上げると部屋から浴室の隅々までを見渡すことができる。若いカップル向けの部屋とも言える。
洋風のお風呂には防水テレビが付く。定員3名。
201号室も、ツインベッドの洋室だ。こちらも301号室と同じく洋風のお風呂には防水テレビが付く。TVは32インチ液晶。
落ち着いたトーンの部屋で、この宿のなかでは一番オーソドックスな客室かもしれない。定員3名。
どの部屋からも、麻生の浦(おおのうら)大橋と生浦湾(おおのうらわん)がよく見える。
しかし、橋と客室が近すぎるので、歩行者と目が合うこともあるかも。ただ、この「あじ蔵かろかろ」のコンセプトは“お篭り”する宿。大事なパートナーとの部屋には景色は無用なのかもしれない。
この宿の食事は、別棟の食事処「オイスターバーあじ蔵」でいただく。
平成16年の改装により、個室形式になった。お座敷タイプとテーブルタイプと2種類ある。
料理はオープンキッチンから運ばれてくる。
ここで取材時の夕食メニューをご紹介しよう(2008年9月上旬取材)。
食前酒は金柑の果実酒。
先附けとして、地元産のワカメを使って豆乳で豆腐状に固めてある豆乳寄せが出た。わさびを出汁醤油に溶かしていただく。
前菜は、季節の五種盛りだ。百合根、海老の旨煮、石川小芋のきぬかつぎ、地元産水茄子の胡麻味噌、いちぢくの胡麻あんかけ。真中に紅葉の葉をあしらえ、細長い器に盛り付けられている。
お造りは、地元産伊勢海老の姿造りだ。一緒に盛られている赤身は石鏡港で揚がったカツオ、白身はこちらも石鏡港で揚がったシオ(かんぱちの子供)。ミョウガとワカメが添えられている。
次は、この地方の名物、岩牡蠣だ。7月〜8月の期間は天然ものが食べられるが、この時期は養殖ものとなる。レモンを絞るか、ポン酢またはチリソースでいただく。
焼き物は、酒と醤油とみりんのタレで焼いた、地元産大アサリとバタ貝だ。バタ貝の正式名は日扇貝。地元ではあっぱとも言う。
次が、石鏡港で揚がった秋鯖。カブラをすりおろしたあんにつけていただく。
鍋物は、国産牛リブロースのすき焼き風鍋だ。エリンギ、豆腐、水菜が入り、何もつけずにそのままいただく。
ここで、トマト、ワカメ、レタス、とさかのりの入った海藻サラダが出た。
揚げ物は、牡蠣フライだ。地元で獲れた牡蠣を生のまま瞬間冷凍したものを使用している。レモンかソースをつけていただく。
酢の物は、地元産アナゴの南蛮漬けだ。上に乗っているのはタマネギとニンジンのなます。
締めは、釜戸で炊き上げた牡蠣飯と湯葉の吸い物と香の物。牡蠣飯の他に釜戸炊き白飯もいただける。今回は牡蠣飯を選択した。米は新潟産のコシヒカリ。
デザートは、スイカとナシといちじくのゼリーをいただいた。
前述のように、夕食は宿泊客以外でも利用できるとのこと。ただし予約が必要。
しかも料金もリーズナブルなので、詳しくは公式HPをご参照あれ。
朝食も夕食同様に、食事処でいただくことになる。
朝食の一例をご紹介しよう(2008年9月上旬取材)。
焼き魚はアジの干物。卵料理はだし巻き卵。サラダは、トマト、オクラ、ハム、レタス、サニーレタス、ポテトサラダで、ダイダイの胡麻醤油ドレッシングをかける。自家製の奴豆腐、茄子のお浸し、ほうれん草とえのきのお浸し。おつまみ風の三点盛は、右から海藻(あらめ)、牡蠣のしぐれ煮、昆布のしぐれ煮。味噌汁の具は、昨夜の伊勢海老の姿造りの頭とあおさのりが入る。ご飯は、釜戸で炊いたもの。焼きのり、漬物の菜っ葉、梅干し、デザートにヨーグルトのキウイソースがけが付く。
この宿では、では、各客室にコーヒー、紅茶、日本茶が用意されているが、ロビーの片隅にフリードリンクのコーナーがある。ここでも、冷蔵庫にコーヒー、紅茶、デトックスジュースが自由にいただけるから嬉しい。
部屋の冷蔵庫は空の状態となっていて、持ち込み品も入れられる。
館内のドリンクの自動販売機も、ほぼ定価販売なので、ご安心を。
三重県は全国でも有数の牡蠣(カキ)の本場として知られている。その中でも鳥羽磯部エリアは、生産量9割以上を占める県内一大産地で、鳥羽地区、麻生の浦湾、的矢湾で養殖されている。
古くから世界中で食されてきた牡蠣は、海のミルクといわれるほど栄養に富んでいる。海水と綺麗な真水が程良く溶け合い、穏やかな入り江がある場所、それが牡蠣にとって最も恵まれた環境であり、その環境が整っているのが、浦村湾(生浦湾おおのうらわん)なのだ。
その環境で育つ牡蠣は、春に種付けをした後、同じ年の10月には収穫ができることから一年牡蠣と呼ばれている。一年で育つ牡蠣には臭みが無く、非常にさわやかな味わいだ。
牡蠣の養殖が本格的に始まったのは、昭和の始め頃の垂下式である。その後約70年の歴史を誇る三重県では、健康被害を防止するため、生食用の牡蠣には殺菌海水による浄化を義務付け、日本一厳しい衛生管理体制を敷いている。
南鳥羽・浦村町は県下随一の滅菌牡蠣養殖の地である。
殺菌海水による浄化とは、体内に大量の海水を取り込み、栄養分を吸収した後の老廃物全てを体外に排出するという牡蠣の特性を利用したものだ。
そんな厳しい管理体制の中で一年を通して安心して食べられる牡蠣を提供しているのが、宿であると共にオイスターバーでもある「あじ蔵カロカロ」なのだ。
“牡蠣とワインと音楽と”をテーマに、冬は地元名産の“真牡蠣”を、そして夏は芳醇な“岩牡蠣”をワインと一緒にいただけるのである。
「あじ蔵かろかろ」は、平成9年に「サン浦島 悠季の里」が買収し、改装して運営を始めた。
その後、平成18年9月に、大幅なリニューアルを施し、現在の形にし、再オープンさせた。
この宿は、ファミリー層を狙って建てたものでは決してない。
大事な人と時間を共有するための宿なのだ。
しかしながら、そういった宿は、ほとんどが一泊3万円以上はする、いわゆる“高級隠れ宿”となってしまう。
ところが、この宿は、露天風呂付きの客室が2名で泊まっても一人2万円以下で宿泊できるという、非常にリーズナブルな料金体系となっている。
露天風呂の付いていない部屋でも、洋風のおしゃれなバスタブがあったり、貸切露天風呂もあるので、遜色ないはずだ。
取材時でも、若いご夫婦、熟年のご夫婦、そしてわけあり?年の差カップルなど、ほとんどが男女二人組みのお客だった。
余計なものを取り払って、料金を下げ、それでいて、スタイリッシュな部屋でゆったりと過ごす・・・・・といった明確なポリシーを持って造られたのが、「あじ蔵かろかろ」なのだ。
チェックアウト12時だなんて、朝寝坊の方にはこんな嬉しいことはない。
新しいカテゴリーとも言えるこの宿を見逃してはならない。(J)